スノーシューハイキングで
動物の足跡を発見!
冬の自然美をゆっくり、しっかりと満喫するなら、スノーシューを履き約1時間半かけて雪の上を歩く「スノーシューハイキング」を。その日の気候や自然のコンディションに合わせてコースを選び、魅力的な雪の中を歩く。
私が歩いたのは、秋には紅葉で有名な蔦沼(つたぬま)周辺の森を歩くコース。
ハイキングのスタート地点まで車で移動する途中、車窓に映るのは、どんどん深くなっていく雪景色だ。
蔦沼がある森は「奥入瀬渓流ホテル」より約200メートル標高が高いだけなのに、ずいぶんと風景が変わることに驚かされる。
見慣れない積雪と寒さに不安を抱いていた私を迎えてくれたのは、ネイチャーガイドの丹羽裕之さん。
「夏は歩くのが困難な場所も、冬は雪で覆われ、道なき道となる。好きなところに歩いていける冬のほうが、自由度が高いんですよ」という丹羽さんの言葉に、一気に期待が高まる。
難しく考えていたスノーシューも、思ったよりも歩きやすい。
一帯は原始林ではなく人の手が入っているものの、地元の人々が択伐(生育状態に合わせて木を伐採し、天然更新によって森の再生を図り、持続可能性を保つ方法のこと)という道を選んできたため、自然に近い状態でブナの森が残されている。
歩き始めてさっそく、雪の上に点々と残る動物の足跡を発見!
「これはテンの足跡ですね。すぐ近くにある穴を掘ったような跡は、エサとなるネズミを探してできたものかもしれません」と丹羽さんが教えてくれる。
これは雪がないと絶対に出会えないもの。さっそく、冬の恩恵に与ってしまった。
進む先に広がるのは、ひたすら白一色の世界。
夏の森で感じるような濃厚な緑の匂いもしないし、人工的な音はもちろん、葉擦れの音も聞こえない。
雪が音を吸収して静まり返った森はまさに静寂そのもので、水墨画のなかに迷い込んでしまったかのような気分になる。
これも、冬だからこそ味わえる、感動的なシチュエーションだ。
2019.02.24(日)
文=芹澤和美
撮影=佐藤 亘