ときに応じて柔軟に使い分け

「区切られた狭い空間にそれぞれの機能を持たせるより、人やときに応じてひとつの空間を自由にいろいろと使えるほうが暮らしが広がる気がして。夕方、息子が学校から帰ってくると仕事をする私の横で宿題をしたり、夜に人が大勢集まれば仕事道具を片付けてパーティのカウンターにも。30人くらいでワイワイ囲むこともあります」

 リビング側のカウンター下は本棚、反対側はキッチン収納。上部には吊り棚を設けて、よく使う調味料や道具類の置き場にする。

 レールを取り付け、Sカンでツール類やマグカップをずらりと吊るせるようにしたから、必要なときにサッと手を伸ばせるのも便利で気に入っていると話す。

 実はキッチン本体はもともとこの家に備わっていた普通のシステムキッチンだ。「収納部分にオークの突き板を貼って、ツマミを取り替え、天板を杉の足場板に替えただけ」というから驚かされる。

 朝はササッと食事の支度をして、家族3人でカウンターを挟んで朝ごはん。片付けをして息子さんを送り出すと、佐々木さんはパソコンに向かう。

 そんな仕事スペースの横だからシンクの見え方には特に気を配ったそう。水切りかごがあると一気に生活感が出るうえ、そもそも気に入ったデザインが見つからないため、選んだのは水切りトレイがシンクと一体になったフィリップ・スタルクのもの。

 三角コーナーも使いたくなくて、生ゴミは使い古したシンク脇の鍋に。言わないと誰も気づかないとか。

「私にとって居心地のいい空間とは自分好みの素材感や、好きなものに囲まれた空間。ごちゃごちゃしすぎても、シンプルすぎても居心地が悪い。緊張感とごちゃっと感の中間みたいなちょうどいいバランスを常にはかっています」

●紹介してくれたのは……
佐々木倫子(ささき ともこ)さん

隈研吾建築都市設計事務所勤務を経て、2015年に建築ユニット .8一級建築士事務所設立。2016年、TENHACHI一級建築士事務所設立。夫の建築家・佐藤圭さんは共同代表。

居心地がいい部屋は
キッチンが生きている

2018.12.07(金)
Text=Nobuko Sasaki
Photographs=Tamon Matsuzono

CREA 2019年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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好みや条件は人ぞれぞれでも、「このままずっとこもりたい……」と思えるような部屋だと、結構幸せな気がします。キーワードは「居心地のいい部屋」。お宅拝見からアイテム選びまで、新しい年を気持ちのいい部屋で迎えるヒントが詰まった1冊です。