世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第196回は、世界遺産にも登録されたメキシコの古都を、小野アムスデン道子さんが訪ねます。
石造りの建物が並ぶきれいな街

メキシコシティから飛行機で1時間ほど、メキシコ中央高原のミチョアカン州の州都モレリア。世界遺産の歴史地区にスペイン植民地時代の石造りの建物が並ぶきれいな街だ。
メキシコ独立革命の英雄ホセ・マリア・モレーロスにちなんでモレリアと名づけられたこの街から、愛の小径、恋愛成就レストラン、コロニアルなホテルと、ロマンチックなスポットをご紹介。

カンテラというピンクがかった石材で造られた重厚な建物、石畳の路、緑の公園と、モレリアの街は、歩いていてとても落ち着く。
モレリアの象徴ともいえる2つの塔を持つカテドラルや、18世紀に建てられた州庁舎、メキシコ独立革命の指導者を輩出したサンニコラス大学、253本のアーチを持つローマ式の水道橋など、歴史的にも価値ある世界遺産の街は、16世紀以降のスペイン植民地時代の姿を今に伝える。
と同時に、ラテンの国らしいロマンチックな風情があちこちに顔を見せる。

18世紀に造られたローマ式水道橋は、今は優雅なカーブを描く街のモニュメントのよう。
右:この小経にある十字架には、カップルが絆を誓った愛の錠前を付けていく。
このすぐ近くの横道は、昔は名産の石鹸を作る工房だった石造りの古い建物が両側に立ち、花と緑に彩られてとても美しい。ここは愛の小径と名づけられ、恋人たちが愛をささやく場になっている。噴水もあって、街中の通りなのにロマンチックな雰囲気が漂う。
今回、モレリアを訪れた目的は、ここで開催された「魔法の村フェスティバル」。
魔法の村と言っても、魔法使いがいるわけではない。メキシコ観光局が「魔法がかかっているように魅力的な村」と認定した村や自治体で、その数約120。
メキシコ全州にある魔法の村が、毎年フェスティバルに大集合、文化や歴史、名産品や伝統の食などをアピールする。ミチョアカン州には、8つの魔法の村がある。モレリア自体は大きな街なので魔法の村ではないが、フェスティバルの会場となったのだ。
モレリアには、スペイン植民地時代からの建物が多く残っているが、そのスペインからの独立運動を指導したホセ・マリア・モレーロスの生地でもある。
生家(実際には彼が生まれた病院の建物)や後に住んだ家を改築したモレーロス博物館もある。生家にはモレーロスの像が展示されているが、定時に作動する驚くべき仕掛けがあってかなり見もの。


2018.11.27(火)
文・撮影=小野アムスデン道子