首都高横羽線の
夜明けの情景が浮かぶ
レコードに針を落として、また驚きました。タイトル曲からは、首都高横羽線の夜明けの情景がバーッと目に浮かぶ。スモッグだらけだった当時の京浜工業地帯を、「白いベレG」、つまりいすゞのベレット1600GTが駆け抜けていく鮮烈なイメージ。
この衝撃的な曲は、2002年にリリースされた『Queen's Fellows: yuming 30th anniversary cover album』で、僕らクレイジーケンバンドがカバーすることになります。
誰もが知る名曲「卒業写真」は、その『Queen's Fellows』と連動する形で2003年に日本武道館で行われた、ユーミンのデビュー30周年を祝うトリビュートコンサートの舞台で、僕らがカバーを披露しました。
そして、先行シングルとしてリリースされた「ルージュの伝言」も素晴らしい。
この曲、一歩間違えば、詰めの甘い、オールディーズのダサい模倣みたいになりかねないのですが、さすがはユーミン。絶妙なセンスによって、フレンチ視線のアメリカ観というか、言ってみれば、セルジュ・ゲンズブールが体現していた感覚に一致するんですね。
彼が好んで吸ったマールボロしかり、歌の題材として取り上げたフォード・ムスタングしかり、アメリカの無骨なカルチャーが、海を隔てたヨーロッパのフィルターによって濾過され、洗練される。
「雨のステイション」は、JR青梅線の西立川駅を歌った曲。すごく心地よいんだけど、シティポップという安易なレッテル貼りには収まらない、ロック的な感覚があふれ出す。
「少しだけ片想い」には、山下達郎さんがコーラスで参加しています。
とにかくこのアルバム、クレジットに目を通すと、現在では大御所となった錚々たる名前ばかりが並んでいる。
そもそもこの作品は、ティン・パン・アレーというバンドがバックを支えています。すなわち、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆の4人組。細野晴臣さんのベースは、特に神がかってますよね。バッファロー・スプリングフィールドを思わせるこのクオリティーは、まさにミラクル。
なのに、演奏している本人たちは割と飄々としていて、体温が低い。そこがまた過激なまでに都会的なんですよ。
『COBALT HOUR』、最高のアルバムです。
Column
横山剣の「俺の好きな女」
東洋一のサウンド・マシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人の域を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!
2018.10.25(木)
構成=下井草 秀(文化デリック)