メニューに温度を記載するという
前代未聞のこだわりの鮨
おつまみが終わったところでメニューが配られる。これも日比谷で新しい試み。しかも、ただのメニューではない。漢字と英語で書かれたネタの名前のすぐ下に、ネタとシャリの温度が記載されているのだ。それぞれのネタに最も適した温度、そして、そのネタをもっとも美味しく食べることができる温度が記されている。なんと繊細な!
このようなメニューを配ることへの自信と自らに課すプレッシャーに、ますます期待が膨らむ。
ここからは、メニューと同じ漢字を使ってご説明したい。まずは高級魚の星鰈(ホシガレイ)。メニューの中でもっともシャリの温度が低い19度。少しひんやりしたシャリに人肌36度の星鰈の組み合わせ。「白身はシャリの温度が低いほうが味が広がるんです」と難波さん。
白烏賊(シロイカ)は、私たちがおつまみで舌鼓を打っている間に、隣でお弟子さんが丁寧に包丁を入れていたもの。口の中ではらはらとほどけて甘みが広がった。
縞鯵(シマアジ)に続いて春子(カスゴ)。シャリを他のネタよりも1度高い22度に上げることによって脂が浮いてくるという。ネタを最も引き立てる1度の差にこだわった結果だ。
次はマグロのトロ。マグロを特集したNHKの番組にも出演されていた難波さん。番組中で、マグロ仲買人からことさら上質のマグロを仕入れることができる鮨職人として紹介されていた。宝石のような鮮やかな色だ。
巻き網のマグロは網の中で暴れて体温が上がり、酸味が強くなってしまうという。そのため漬けにして酸味を抑えている。おつまみの途中というタイミングで大きな切り身から切り分けていたのは、その工程のためだったのだ。
訪れたのはちょうど希少な新子(シンコ)が出回っている時期だったが、ここでは小鰭(コハダ)だった。新子よりも、小ぶりの小鰭のほうが味がいいと思っているから、敢えて新子は仕入れないのだという。まろやかな赤酢のシャリがうま味を引き立てる。
伊佐木(イサキ)の後は、やっと手にはいったという新鮮な鰯(イワシ)。表面が研ぎ澄まされた刃物のように光っている。口に入れると、臭みがまったくなくふわりとやわらかい。今まで鰯が好きだと思って食べて来たのに初めての味と食感だった。
鯵(アジ)、黒むつと続く。黒むつはネタが40度でシャリが24度。ほんのり温かく、舌の上で脂がとろけた。
迫力の車海老を赤酢でいただいた後は、北海道利尻の紫雲丹(ムラサキウニ)。山盛りで食べる前から笑顔になってしまうボリュームだ。
そして、最後は東神奈川の穴子。おつまみの穴子とは産地が違うものだ。阿佐ヶ谷で握っていたときには穴子はレア気味だったが、日比谷では少し硬めに火を入れている。甘過ぎないタレで、大満足の最後を飾ってくれた。
「豪雨や台風などで魚が少ない日もありますが、その日その日で最高の状態の鮨を、そして僕にしか出せない唯一無二の鮨を、と思って握っています」と難波さん。その自信とプライドが隅々まで行き届いた素晴らしいランチだった。
阿佐ヶ谷では、常連さんだけで数カ月先の予約が埋まってしまって新規の予約は困難だった。でも大丈夫! 「鮨 なんば 日比谷店」は、インターネットの予約サイト「OMAKASE」から予約することができる。誰にでもチャンスがあるのだ。毎月15日に、2カ月先末日までの予約を受け付けている。下記サイトにアクセスして、ぜひ究極の鮨を堪能してほしい。
鮨 なんば 日比谷
所在地 千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 3階
電話番号 03-6273-3334
営業時間 12:00~15:00、19:00~23:00
定休日 毎週月曜、第1火曜
料金(税込み) おまかせ(ランチ) 25,000円、おまかせ(ディナー) 30,000円
http://www.omakase-japan.jp/stores/10004
[2018年7月訪問]
Column
新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り
ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!
2018.09.15(土)
文・撮影=たかせ藍沙