放心状態になったほど、衝撃的な作品
――そうやって出来上がった作品を初めて見たときの感想を教えてください。
自分が出させていただいた映画では初めて放心状態になったほど、衝撃的な作品でした。キャスト全員が現場でモニターチェックをしなかったので、実際自分がどう映って、どういうお芝居をして、全体像がどうなっているのか、まったく想像できないままだったんです。そんなまっさらな気持ちで見た僕が受け取ったのは、リアルな高校生活で感じたような「自分は何をやっているんだろう? どこに向かって走っているんだろう?」といった感情が作品全体によく表れているなということ。素直に共感できました。
実際、作品を見たときは高校を卒業し、これからしっかり社会人としてやっていこうと思っていたときだったので、「これからは学生生活に逃げていたことにも向き合っていかなきゃいけない」と確認させられました。
――具体的に、“逃げていたもの”とは何だったんでしょうか?
たとえばですけど、毎日朝起きて、学校行って、同じ友達と接して、放課後に遊びに行って、一日が終わっていく……。そんななか、寝る前に「今日、あなたは何を得ましたか?」と聞かれたら、何も答えられないんですよね。学生の頃は、楽しいからいいじゃんと言い聞かせていたんです。でも、社会人になったからには、毎日の生活を充実させていかないといけないし、成長しないといけない。それが自分と向き合うことだと思うんです。
――そして、この作品に出演したことで、学んだことがあれば教えてください。
桐島のような人間が学校という場でどんな気分でいるのかを体験できたと同時に、改めて、学校というひとつの社会には、いろんな人がいて、ある事が起きると巻き込まれる人がいると客観視できたことですかね。これは自分の学校生活では気付かなかったこと。つまり、大人の方が見れば、懐かしいと思われるかもしれませんし、学生の方が見れば、今の状況に似ているとまではいかなくても近いものを感じたり、いろいろ感じることがある作品だと思いますね。
2012.08.03(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Naoya Sanuki