見どころ満載の老舗酒蔵を見学

新酒が出来たことを示す大きな杉玉が吊るされた「末廣酒造」。

 酒どころで有名な会津は、全国規模で開催される唯一の清酒鑑評会「平成28酒造年度全国新酒鑑評会」では、13酒蔵が金賞を受賞している。

 1911年から続くこの大会の金賞受賞蔵数で、福島県は歴代最多タイの5年連続日本一を記録している。そんな銘酒揃いの会津を牽引する老舗の酒蔵が、1850年創業の「末廣酒造」だ。JR会津若松駅から車で約10分、りっぱな木造の蔵は「会津若松市歴史的景観指定建造物」に指定されている。

中に入ると、昔ながらの造りの玄関に立派なこも樽が積まれている。

 酒蔵見学は、参加費無料。今でもすべて手造りで酒を造る古い「嘉永蔵」と新しい「博士蔵」、そして約100年前に建てられた住まいなどを見学することができる。

左:嘉永年間から手造りの醸造を今も続ける「嘉永蔵」。
右:熟成の古酒が並ぶ「熟成蔵」。

 明治時代までは、蒸した米と麹、水を櫂ですりつぶす山卸という重労働を経て酒を造っていた。このたいへんな山卸をやめて(廃して)、麹菌の力で酒を造る製法を“山廃造り”と呼ぶ。その山廃造りを初めて導入したのが、この末廣酒造だ。

往時の当主が、野口英世と一緒に写った写真も。

 現在の猪苗代町で生まれた偉人・野口英世は、養子縁組によるものなので血の繋がりこそないが、系図上は末廣酒造の3代目の主の甥にあたる。野口英世が渡米後にただ一度日本に戻って来た時は、その末廣酒造の主の住まいにも立ち寄っている。

 ここには英世の書が残っているが、その達筆ぶりには驚く。また英世の姿をとらえた写真もあり、歴史の一幕をうかがうことができるのだ。

左:希少な大吟醸と、大きな梅が漬け込まれた梅酒。
右:売店でいろいろな土産物を吟味したい。

 酒蔵見学の最後には無料の試飲もある。そして売店では、嘉永蔵で造る大吟醸も販売している。ここでしか買えない貴重な逸品だ。

末廣酒造
所在地 福島県会津若松市日新町12-38
電話 0242-27-0002
http://www.sake-suehiro.jp/

2018.02.24(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵