◆島崎藤村『年明け前』

自然主義文学の中心的存在となった藤村のことを「ナチュラルトーソン」と呼びたい。写真は、『夜明け前』を完成させてくつろぐ1936年頃の藤村。

木曽路はすべてしゃぶしゃぶ屋である。北海亭はそば屋である。

 そもそも文学というものにまったくもって無縁な人生を送ってきたので、ようやくここまでパスティーシュらしきものをひねり出したところで限界がやってきた。どうせ俺が通ってた村の分校の図書室にはお粗末な蔵書しかなかったよ! しょうがないので以下、文豪以外の文体を模写します!

左:渡瀬恒彦扮する北海亭の主人は、暴力団員、刑事、南極観測隊員、タクシー運転手といったさまざまな職業を経てそば屋を開業した……などと勝手に経歴を想像してしまう。
右:2人兄弟の母親を演じた泉ピン子。ちなみに長男役は鶴見辰吾。泉ピン子から鶴見辰吾は生まれないと思うが……などと、誰かの母に扮するたび言われるのだからピン子も気の毒ではある。なお、NHKドラマ「ちょっと待って、神様」は、宮崎あおいの身体に泉ピン子が宿るという設定だったが、当時、もしも中身がピン子の宮崎あおいに付き合ってくれと言われたら、俺はイエスと答えてしまうのだろうかと1カ月ほど懊悩した。あ、あおいちゃん結婚おめでとうございます。

 なお、この物語は、渡瀬恒彦と市毛良枝がそば屋の夫婦、泉ピン子が二人の兄弟の母親というキャスティングによって1992年に東映で映画化された。ということで、次の妄想へと続く。

2017.12.31(日)
文・撮影=ヤング
写真=文藝春秋