JR福知山線・神戸電鉄三田駅から北へ歩くこと約4分。「キビトパン」は、農家の納屋をお洒落に改装したパン屋さん。木の扉を開けると、しっかり焼きこまれたシンプルなパンが並んでいて、こんがり香ばしい香りに包まれます。「木とヒト=自然を結ぶ架け橋になるパンを」とネーミングされたお店のナチュラルな雰囲気に、ほっこり。心癒されます。
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右:工房から見た売り場とカフェ。清原さんのお気に入りの景色。
ご主人・清原達也さんは、1976年、東京生まれ。大学卒業後にIT企業に勤めますが、「何のために働くのか。生きている実感がほしい」と、2年でドロップアウト。学生時代を過ごした京都で飲食業のアルバイトを始めます。
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「学生時代の友人が、カナダ人で、ベジタリアン。食生活や食べ物について考えるきっかけになった」と清原さん。玄米菜食を実践したり、マクロビオティックの勉強をしたりもしたのだそう。
その後、ワーキングホリデーでオーストラリア、ニュージーランドへ。いつしか「ベジタリアンのカフェをやりたい」と思うようになっていました。
オーストラリア滞在中に、ルームシェアしたのが、オーストリア人とトルコ人の両親をもつパン職人。パン作りを教わり、酵母を起こして自分で焼いたりもするようになりました。
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「日本に帰ったら、パンをやろうと思った。オーストラリアに行っていなかったら、パン屋になっていない。今も、その時に作った酵母を継ぎ足し、継ぎ足しして使っているんですよ」と、にっこり。
帰国後、自家製の酵母を繋いで使っている「ルヴァン」の門を叩き、東京で2年間、長野で6年間、働きます。
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「転勤族でしたから、日々の生活に根ざした土地や故郷への憧れがあって」、奥様の実家がある兵庫県三田市で、2015年3月25日、自店をオープン。半年かけて自らも大工さんを手伝って、納屋を改装したのだそう。
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「材料はできるかぎりオーガニックのものを選んでいます」と清原さん。
小麦は、兵庫県豊岡市の有機栽培農家から玄麦で仕入れて自店で挽く「イワイノダイチ」や「ゆめかおり」をメインに、北海道産や長野県産も使用。
「ルヴァンでも中力粉を使っていて、味がよかったので。ゆくゆくは、三田の麦で作りたい」。現在、実験的に小麦の栽培を始めてもらっているそう。
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奄美の無農薬栽培のサトウキビから作られた黒糖、長崎の自然塩。バゲットには、700年前からずっと同じスタイルで作られているスロヴェニア産の天日干しの塩。「バゲットには、パンチがある塩がいい。モルトの代わりに入れる国産のハチミツとのバランスもいいんです」。素材を選ぶときは、その背景を大切にしていると言います。
「麦を作る農家や塩を作る人を訪ねて、生産者の顔やモノづくりについて、よりシンプルに食べる人に伝えたい。パンは山と海の出合いでできているから」
2017.09.10(日)
文・撮影=そおだよおこ