世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第159回は、大沢さつきさんが新しいラグジュアリーなペルーの旅をレポートします!
旅の序章は、アルパカからコンドルへ
標高4000メートルを超える高所を走る、南米初の豪華寝台列車「アンデアン・エクスプローラー」号が、2017年5月4日、ペルーでの運行をスタートさせた。
今回は、その初乗客としてアンデス高地を巡り、雄大なチチカカ湖を遊覧し、インカ帝国の都クスコを目指した列車旅行のご報告。あの「オリエント急行」を所有するベルモンド社の旅は、未知の光景とのワクワクするような出会いを、ラグジュアリーに、かつちょっとミステリアスに体験させてくれた。
旅は、ペルー第2の都市、アレキパを取り巻く火山地帯からはじまる。
大地と草しかない、茫漠とした風景。薄い空気と冷涼で厳しい気候が、樹木の成長をはばむ。行けども、行けども目に入るのは草原のみ。が、そんな厳しい自然の中で草を食むアルパカやリャマがいる。
そして、ビクーニャ。“アンデスの黄金”といわれる、世界最高級の天然素材が何頭も! 動物界の中でもっとも細いその体毛は、1頭の毛で一家が2年暮らせるほどに高価だ。
そしてアレキパから車を走らせること、およそ4時間。世界最深の谷のひとつ、コルカ渓谷の入り口へとたどり着いた。ここ「ベルモンド ラス・カシータス」は、標高3417メートルに立つベルモンドのホテルだ。
夜、シャーマンが旅の無事を祈るために、儀式を行ってくれた。ちょっと妖しい、でもなにやら神妙なこころ持ちにさせられる火と煙のセレモニー。最後にコカの葉をいぶした煙を吹きかけられて……、明日はコンドルに会いに行く。
コルカ渓谷は、その谷底の深さ最大4160メートル。グランドキャニオンの倍の深さがあるといわれる。その谷を、悠然と、滑るように翔ぶコンドルは、まさしく勇者。上昇気流に乗って天空を行く姿を、かつてインカの人たちは“神へのメッセンジャー”として崇めたという。
実際のコンドルは60年ほど生き、生涯ひとつがいで添い遂げる夫婦仲良しな鳥。5週間何も食べなくとも生きていけるタフな鳥。そして翔べる陸鳥の中で世界最大なのが、このアンデスコンドルなのだ。
2017.06.27(火)
文・撮影=大沢さつき