近江伝統の発酵食
“鮒鮓”をフレンチで

鮒鮓とチーズ、そしてワインのジュレの出会い。

 琵琶湖という大きな水がめを持ち、山に囲まれた近江の地。厳しい冬を越えるための発酵という保存方法は、伝統の食文化である。

 「星野リゾート ロテルド比叡」のディナーでは、近江伝統の発酵食“鮒鮓(ふなずし)”をフレンチとマリアージュ。“鮒鮓”とは、春に穫ったフナを塩と飯(いい)に漬け込んで発酵させたもの。生の魚を何年間も発酵させるわけだから、その独特な匂いは鮮烈な体験だ。フランスもチーズなど発酵食品のある国だが、いったいどんなフレンチに仕上がるのだろうか。

 最初のアミューズには、イワナのタルタルやビワマスのマリネといった琵琶湖の魚が登場。和のニュアンスもあるモダンフレンチのメニューに仕上がっていておいしい。

 次にいよいよ鮒鮓が登場。まずはクリームチーズに鮒鮓のスライスをのせ、貴腐ワインのジュレで仕上げた一品。酸味がいい具合に効いている。鮒鮓は、創業400年近いという老舗「四〇〇年鮒寿し 総本家 喜多品老舗」のもの。

2品目のフォアグラとテリーヌは、きりっとした日本酒“七本鑓”に合った。

 もう一品は鮒鮓を使ったフォアグラとテリーヌ。4年漬けという最後の1年を酒粕で漬けた特別な鮒鮓が材料だ。4年漬けは別名甘露漬とも呼ばれ、奈良漬のようにほのかな酒の香りがして甘みを感じる。

地元の素材を使ったオーベルジュを切り盛りする岡料理長。

 滋賀県出身の岡亮佑料理長は「オーベルジュとして地元のものを使うのは自然なこと。鮒鮓の個性の強さを生かしつつ、添えた食材で香りや食感のバランスをとっています」と言う。

 地元の食に合うのは地元のお酒。フレンチだが辛口の地酒がぴったりとはまった。

 その後のメイン料理は真鯛のポアレに国産和牛のローストと、オーソドックスなフレンチだが、碓井エンドウや山椒でひとひねり。こちらには地元の琵琶湖ワイナリーの赤を合わせた。

 食前の17時から17時30分には、ソムリエによる無料のワインテイスティング講座があって、琵琶湖ワイナリーの製品を含む数種類のワインをテイスティングさせてくれるので、食事の際にはとても参考になる。

琵琶湖ワイナリーから“浅柄野Minori”、そしてボルドー、ブルゴーニュと、3本の赤ワインを試飲しながら、ブドウの味の違いや料理との合わせ方を聞く。

2017.06.17(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵