【次に流行るもう一曲】
ぼくのりりっくのぼうよみ
「Be Noble」

映画『3月のライオン』の主題歌に起用

伊藤 2曲目は以前も取り上げたことのあるアーティスト、ぼくのりりっくのぼうよみ。映画『3月のライオン』の前編主題歌になっている「Be Noble」のリカットシングルです。彼は高校2年生の時、10代向けのオーディション「閃光ライオット」でファイナリストになり、TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」で才能を評価され脚光を浴びました。元々はニコ動で音源を公開して、そこからバズッたアーティストです。その時は“紫外線”という名義でした。メジャーデビューし文学性の高いリリックで注目されていますが、まだ大学1年生の19歳、Ultron世代です。

山口 才能ある音楽家ですね。輝いています。伊藤命名の「Ultron世代」では、代表的存在と僕は思っています。インタビューなどで、ビジネスや業界構造に対してもオブジェクションを唱えていて、注目しています。クレバーな人という印象です。まっとうな感覚でプロとして音楽に取り組むと、時代遅れになっている音楽業界の仕組みに違和感を覚えるのは当然です。一度、会って話してみたいです。

伊藤 曲を聴くと不思議な世界観をもったアーティストですよね。普通の少年だけど、ただちょっと未来から来たみたいな(笑)。

山口 未来から見たら、日本の音楽業界は石器時代のように見えるでしょうね。未来少年ぼくりりが、日本の音楽ビジネスを変えてくれるのかもしれません。日本は音楽家が社会的な発言をするのを忌避する雰囲気がありますが、負けないでほしいですね。才能のある音楽家が音楽ビジネスの仕組みについて論理的な批判をしてくれることは改革のエンジンになるので、大切にしたいです。

伊藤 未来少年なら説得力ありますしね(笑)。『3月のライオン』はマンガで読みました。ずいぶん前に読んだので内容までははっきり覚えていませんが、面白いマンガでした。映画も期待したいですが、あまり楽曲の世界観と映画の原作の世界観はリンクしないように感じます。

山口 僕は将棋好きなので、期待していますよ。大友啓史監督もNHK時代からファンなので、良い映画になるのではないかと楽しみにしています。

伊藤 ところで最近は映画に前編と後編があるのも珍しくないですが、主題歌まで前編と後編で分かれているんですね。映画が前編と後編で世界観が違うからといえば聞こえはいいですが、なんかタイアップの切り売りな感じもしますね。

山口 前編はぼくりりで、後編は藤原さくらなんですね。同世代という以外の共通点は見出しにくいですね(笑)。近年の映画やドラマの主題歌は、作品の内容と有機的に絡んでいないとヒットに結びつきません。ペタッと貼り付けたみたいなタイアップは、ユーザーに刺さらずにほとんど効果ないんです。最近では、星野源の「恋」という、大成功例がありますね。「Be Noble」と映画『3月のライオン』がどんな関わり方をユーザーに訴えてくるのか、それも楽しみにして、映画館に行きたいと思います。

ぼくのりりっくのぼうよみ「Be Noble」
CONNECTONE/ビクターエンタテインメント 2017年3月8日発売
1,200円(税抜)
■ぼくのりりっくのぼうよみは、高校3年生だった2015年にアルバム『hollow world』でメジャーデビューを果たす。現在は大学1年に在学中。本作の表題曲は、2017年1月に発売されたセカンドアルバム『Noah's Ark』からのシングルカットで、神木隆之介主演の映画『3月のライオン』前編の主題歌。
■「Be Noble」作詞/ぼくのりりっくのぼうよみ 作曲/ササノマリイ、ぼくのりりっくのぼうよみ
http://bokuriri.com/

【動画サイト】
「Be Noble」

https://www.youtube.com/watch?v=dlMN-_8dxos

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室「リリック・ラボ」 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/

L.A.↔TOKYO の音楽を繋ぐクリエイターチーム「LATKO.」 
http://latko.jp/

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2017.03.01(水)
文=山口哲一、伊藤涼