コーライティング=共作は人間力が肝

伊藤  今回の「EXCITE」のクレジットをみると作詞作曲にKanata Okajimaの名前がありますね。山口さんとの共著『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』 〈外部サイト〉でスウェーデンでの作曲生活の話をしてくれましたが、相変わらず活躍していますね。

山口 スウェーデンを本拠地にコーライティングが基本というのが日本人作曲家として新しい在り方ですよね。今回も作詞作曲の両方で共作のクレジットがされています。彼女のポジティブな性格が表れている楽曲だなと思いました。

伊藤 コーライティングで活躍できるっていうのは、作曲家としてのスキルだけでなく人間力も問われることになりますからね。そういう意味では彼女の明るい性格はストロングポイントです。オレも今年から、LAを中心に活動するHer0ismや世界中を飛び回るRyosuke“Dr.R”Sakaiと一緒に音楽プロデュースチーム「LATKO.」〈外部サイト〉を走らせ始めました。USトップレベルのクリエイターたちと共にプロデュースをしてハイクオリティな音楽を制作し、日本はもちろん、世界マーケットで勝負するチーム。また世界に出ていけるクリエイターの開拓・育成にも取り組みます。世界で勝負するクリエイターというのはコーライティングを使いこなさないといけないし、必然的に人間力がないと勝負にならない。Her0ismもRyosuke“Dr.R”Sakaiも素晴らしいスキルを持ったプロデューサーだけど、なんといっても人間としての魅力が素晴らしい。

山口 LATKO.には期待していますよ。プロ作曲家育成の「山口ゼミ」〈外部サイト〉を始めたことで、自分がプロデュースする以外でも一流のサウンドプロデューサーとお話しする機会が増えました。昔から変わらないのは、音楽性+人間力が大切ということですね。でも、Her0ismやDr.R、最近AKB48で活躍しているAkira Sunsetなどは、新しい世代だなと感じます。

伊藤 どんなところに新しい世代を感じるんですか?

山口 よい意味でコダワリが無いというか、目的に対して合理的な思考をしていますね。自分の音楽的嗜好との葛藤で無駄なエネルギーは使わずに、次の時代を拓いていく。今なら2017年に世界中で多くの人に支持されるポップミュージックは何かについて掘り下げて考えて、注力しているところが素敵だと思いました。

伊藤 そうですね。音楽家も丁稚奉公や弟子制度の時代から、作家事務所のように会社組織に、それから学校制度というように音楽業界への入りかたが変わってきたんだと思います。だけど今は、個人がセルフマネージメント、セルフブランディングをできるようになり、インディペンデントな音楽家が活躍するようになった。そうなると、音楽だけをやっていればいいというわけではないし、“I Love Music”だけでは勝てなくなってきた。コダワリがないというよりは、もっと視野が広いということじゃないかな。それに一度成功しても次の戦い方を知らないとアーティストと同じように“一発屋”で終わりかねない。今は10年後まで、いやもっと先まで意識できるクリエイターだけが本当の意味で成功を掴めるんじゃないかな。LATKO.も世界を視野に入れたインディペンデントなクリエイターたちのチームで、より大きなスケールで物事を測るために集まっているというイメージですね。

2017.01.14(土)
文=山口哲一、伊藤涼