「A列車でいこう」は16世紀の南蛮文化がテーマ

天草に滞在中、なんども目にするのは、驚くほど透明度の高い海。

 天草という地名は聞いたことがあっても、どこに位置しているのか、正確には分からないという人も少なくないはず。熊本県にある天草は、2つの主島(上島、下島)と大小120あまりの島々からなる諸島。人口が集中しているのは、熊本県本土から5つの橋「天草五橋」で結ばれている上島と、その西にある下島だ。

 上島と下島の間には狭い海峡があるものの、橋で繋がっているので、ひとつの大きな島のような感覚。仮にこの2島を合わせてひとつの島とみなすと、主要4島と北方領土を除く日本の島の中では、沖縄本島、佐渡島に次いで広い。なんとなく「遠くにある小さな島」というイメージもあるかもしれないけれど、天草は想像以上に大きいのだ。そして、それぞれのエリアごとに、個性的なカルチャーや自然があるから面白い。

 2016年4月に起きた熊本地震では心配する声もあったものの、幸い、天草はインフラや交通、建物に被害はなし。「天草から熊本を元気にしよう!」という声もあがり、支援活動の拠点としても力を発揮している。

手前に見えるのが下島、海を挟んで向こうが上島。2つの島はループ状の天草瀬戸大橋で繋がり、車でも徒歩でも行き来できる。

 まずめざしたのは、本土に近い上島。アクセスは、熊本駅から所要1時間強の快速バスを利用するほか、阿蘇くまもと空港からレンタカーで約2時間のドライブ、熊本や福岡から下島までの直行便飛行機、船など、いくつかの手段があるが、今回選んだのは、ジャズが流れるレトロな列車と、海を眺めるクルーザーを使ったルート。移動の時間も楽しめるし、なにより、渋滞の心配がいらない。

 熊本駅から天草観光の玄関口である三角駅までは、JR九州の特急「A列車で行こう」を利用する。ジャズの名曲に因んで名付けられた列車のデザインは、“16世紀の天草に伝来した南蛮文化”がテーマ。ステンドグラスをあしらった窓といい、エキゾチックな模様の天井といい、キリシタン文化が香る天草旅のプロローグにぴったりの雰囲気だ。

「A列車で行こう」は全席指定。土・日・祝日のほか、GWや夏休みは毎日運行。普通列車は、通年で毎日三角駅まで運行している。

 乗車後、さっそくバーカウンターへ。メニューには、熊本特産のデコポンを使ったハイボールや天草のスイーツなどがある。ドリンク片手に、リラックスしながら眺める車窓に映るのは、有明海や雲仙普賢岳。三角駅までの約40分は、とても優雅であっという間に過ぎてしまう。

左:ジャズの名曲が流れる車内。
右:バーラウンジで、オリジナルのドリンクをオーダーするのもよし。

 三角駅に到着後は、目の前にある三角港で「天草宝島ライン」に乗り換えて天草へ。「A列車で行こう」とは接続運航しているから、待ち時間もさほどなく、とてもスムーズ。

左:三角駅はキリシタン文化が薫る天草らしい趣ある外観。
右:三角駅から道路を渡ってすぐの三角港は、三角形のフェリーターミナルが目印。
天草までの乗船時間は17分。天気がよければデッキ席で海風を感じて!

A列車で行こう
電話番号 050-3786-1717(JR九州案内センター)
URL http://www.jrkyushu.co.jp/trains/

天草宝島ライン
電話番号 0969-56-2458(マリノステーション シークルーズ)
URL http://www.seacruise.jp/teiki/

2016.07.13(水)
文・撮影=芹澤和美