Magnificent View #931
ミディ運河(フランス)

(C)Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 美しい水辺の景色が続くミディ運河。フランス南西部の都市トゥールーズを流れるガロンヌ川と地中海とを結ぶ全長 240キロのこの美しい運河の建設は、17世紀最大のプロジェクトでもあった。

 当時、大西洋と地中海の間の水運は、イベリア半島を大回りするしか航路がなく、フランスはスペインにジブラルタル海峡の通行税を支払わなければならなかった。そこで、時間と通行税削減のために考え出されたのが、この大運河だ。

 1666年から1694年まで続いた工事には、当時の最先端技術が導入された。技術的に優れているだけでなく、芸術的とも言われるのは、設計者のピエール・ポール・リケが建築美と景観美にこだわったため。南仏の強い日差しを遮るべく、運河沿いに4万5千本の樹木を植えるなど、いたるところにそのこだわりが見られる。

 完成したミディ運河は産業革命を支え、南仏の物流を大いに発展させた。鉄道の登場とともにその役割を終えたが、以降は、定番の観光地に。現在は多くのクルーズ船が行き交っている。

Column

今日の絶景

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2016.04.18(月)
文=芹澤和美