国外27か所、国内13か所。世界を歩きながら、自分自身と向き合い、誰かを“おもう”日々――。地球を舞台に旅した3年間を巡る40篇が収録された、アナウンサー・宇賀なつみさんの旅エッセイの第2弾『おもうがたび』(幻冬舎)から、一部抜粋してお届けする。
今回の旅の舞台は、友人・清水みさとさんと訪れた「アイスランド」。1週間のヨーロッパ旅行とは思えないほど身軽な清水さんの荷物に驚いた宇賀さん。なかでも印象的だった出来事とは……?
Over The Rainbow/2025年 9月 アイスランド
ひんやりとした冷たい空気が、頬に吹きつける。吐く息が白い。暑すぎる夏にすっかり慣れてしまった体が、驚いてビクッと震えた。アイスランドと言うくらいだから寒いのは当然だけれど、9月になると平均気温は10度を下回るらしい。空港で借りた車に急いで暖房を入れて、まず首都レイキャビクに向かった。
海外で運転することにも、ずいぶん慣れてきた。今はネットで簡単に予約ができるし、ほとんどの場合ナビも備え付けてある。やたら長くて発音の難しいアイスランド語を全く理解できなくても、世界中ほぼ共通の交通標識の意味さえわかれば、特に困ることもない。街までの道をまっすぐ進んでいると、分厚い布団を広げたような灰色の雲の隙間から、光が差してきた。このまま晴れるかもしれない。そんな予感がして、胸が高鳴った。
今回の旅は、タレントの清水みさとちゃんと一緒。昨年末に共通の友人を通じて初めて出会った時、私が朝日新聞デジタルで執筆している連載を「読んでます!」と言ってくれて、とても嬉しかった。サウナ好きな私ももちろん、全国各地でサウナイキタイのポスターは目にしていたし、色々な媒体を通じてみさとちゃんのことは知っていた。実際に会ってみると、柔らかく可愛らしい雰囲気からは想像できないほどアクティブで、大の旅好き。かなりフットワークが軽いこともわかって、意気投合した。
「来年は一緒にアイスランドに行こうね!」
初対面でそんな約束をして、本当にやって来てしまった。
レイキャビクに着く頃には、真っ青な空に変わっていた。日差しがポカポカと暖かい。カラフルな建物が並ぶ可愛らしい街は、とにかく静かだった。清潔で整頓されていて無駄がない。ハットルグリムス教会から海に向かって坂道を下りていくと、途中に行列のできているパン屋があった。甘くて香ばしい香りが漂っている。シナモンロールが有名な店らしく、並んでみることにした。
10分ほどでレジまで進み、店内でそのまま焼きたてのシナモンロールを頬張る。ふわふわで軽く、完璧なバランスの甘さで、涙が出そうになった。今まで食べたことのあるシナモンロールは何だったのかと思うくらい、感動的な美味しさ! ペロリと完食してしまった。すっかり冷えていた体が、ポカポカと温まってくる。そのままさらに下って横断歩道を渡ると、目の前には海。その向こうには山々が見えた。都市の景色とは思えない。空気が澄んでいて、気持ちがいい。
ひと通り散策した後、今度はクリントン元大統領が宇宙一美味しいと言ったことで有名になったという、ホットドッグスタンドへ立ち寄った。注文してから作ってくれたホットドッグは熱々で、ラム肉のソーセージに、ジャリジャリした食感の玉ねぎソースがよく合う。宇宙一は大袈裟なような気がしたけれど、立ったままあっという間に食べ終えてしまった。
