ドラマの着地点に込めた「祈り」
――本作が単なる政治サスペンスではなく、どこまでも「人間の尊厳」を描くドラマであるということが、毎話の端々から伝わってきます。分断が進みつつある現代の世の中を見た上で、佐野さんはこのドラマの着地点に、どのような祈りを込めましたか。
今の世の中って、圧倒的に人と人との「対話」の機会が減っているなと思うんです。LINEやSNSといった便利なツールによって、短い文章を投げ合う「やり取り」の回数はきっと増えているけれど、その分、一人でじっくり思考する時間は減っているし、相手とじっくり向き合って深く対話する時間は圧倒的に少なくなっています。
昔だったら、時間をかけて相手と向き合う中で意見が違ったとしても、「あなたはそう思っているんだね」と、分かり合いはしなくても、相手の中にその言い分があるということ自体は理解して終わることができた気がするんです。それができない今、ネット上にポーンと投げられた一つの強い言説だけが一人歩きして、分断が深まっていく。
だからこそ、このドラマの最後のテーマは、やっぱり「対話」にしようと決めていました。もっとちゃんと会話をしようよ、議論をしようよという、すごくシンプルですけれど、政治に限らず人間社会のあらゆる局面に一番必要なこと。それが少しでもこのドラマを通して伝わるといいなと思って、最後まで何度も話し合いました。
普通の日常の困りごとや、目の前の人との対話の一個一個、それこそが全部「政治」なんだということ。政治は決して遠い世界の話じゃない。その祈りが、観てくださる方の生活にそっと届いてくれたら嬉しいです。
──放送を終えた後だからこそ伺いたいのですが、物語のラスト、あかりたちではなく流星が当選するという結末に、衝撃を受けた視聴者も多かったと思います。これは最初から狙っていた着地点だったのでしょうか?
はい、実は最初から「流星にすべてを持っていってもらう」と心に決めていました。私個人としては、彼こそが物語の中で一番、自分の頭で考えて、動いて、自分の足で冷酷な現実を這いつくばって生きてきた人間、現状の政治のありようも知った上で、変えようと動き出す人だからです。
他の登場人物たちがどこかで誰かに甘えられたり、守るべきものがあったりする中で、流星だけは最初から孤独で、頼れるのは自分の才覚と努力しかなかった。だからこそ、ドラマの最後で大きなインパクトを残し、観ている人の感情を揺さぶる役割を担うのは、流星であってほしいと思っていました。松下さんがその意図を完璧に汲み取って、ただの悪役や野心家ではない、圧倒的な切なさと説得力を持って演じきってくださったからこそ、あのラストが成立したのだと思います。
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佐野亜裕美(さの・あゆみ)
1982年生まれ。2006年にTBSテレビに入社し、11年に『20年後の君へ』でプロデューサーデビュー。20年に関西テレビ放送に移籍。『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)、『エルピス—希望、あるいは災い—』(22年)など話題作を手がけ、23年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した。
月10ドラマ「銀河の一票」(カンテレ・フジテレビ系)
最終回 6月29日(月) 22:00〜22:54
TVer、カンテレドーガ、FOD、Netflixなどで配信中
