素材の探求からすべては始まる
内装デザインを担当したのは、現代美術作家・杉本博司氏とともに「新素材研究所」を主宰する建築家、榊田倫之氏だ。自身の設計指針に掲げる「Old is New」の言葉は何を意味するのか。
「高度経済成長で淘汰されてきた日本の良きモノや工法に光を当て、再編集することをテーマとしています。素材の探求によって場所を知り、歴史を知り、自らを知ることへ繫げていきたい」
帝国ホテル 京都の仕事は、まさにこの哲学の実践だった。気品に満ちた空間で何より存在感を放っているのは、石と木という二つの素材である。
「館内に日本の様々な石を配しています。フランク・ロイド・ライトが手がけた帝国ホテル2代目本館でふんだんに使われた大谷石、弥栄会館の貴賓室に使われていた鹿児島・沖永良部島産の田皆石、弥栄会館の外壁に使用されていた北木石をプールの外壁に用いるなど、悠久の時間を感じさせてくれることと思います」
木材については、国内産の欅を随所に使っている。数寄屋建築では通常針葉樹系の材が多用されるが、今回は丈夫な広葉樹も使用した。
客室のベッド周りには屋久杉や神代杉など、榊田氏の目利きにより集められた銘木を、各部屋の雰囲気に合わせ惜しみなく配した。
「弥栄会館が建てられたのは、国会議事堂の竣工と同じ年。近代国家として後進だった日本が、自国の力だけで良い建築を造ろうと奮闘した時代です。その記憶を継ぐためにも、できるだけ国産の素材を用いることは心がけました」
CREA Traveller 2026年春号
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