京都に移住した“新参者”が創る畳、その本質

 人生はこれを機に大きく舵を切ることになる。朝、家を出る前に1枚の畳を仕上げ、日中は畳店で働き、夜は再び畳に向かう。畳漬けの日々が続いた。しかし、それは苦ではなかったという。好きでたまらないものに真正面から向き合える時間だったからだ。

 やがて技術を競う大会でも頭角を現し、数々の賞を受賞。独立後は、従来の畳職人の枠にとらわれない発想で新たな表現にも挑み始める。KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭へ黒畳を提供するなど、現代の表現の場にまで広がりを見せている。

 横山氏の畳は今やパリやニューヨークで、日本家屋に暮らしたことがない人の生活にも溶け込んでいる。そういった海外向けだけではない。国宝級の寺や町家御用達の畳職人を師とした横山氏の畳には、徹底的に美意識を叩き込まれた背骨の通った美しさがある。代々お抱えの畳職人に仕事を依頼する家が比較的多い京都にあって、建仁寺や宝泉院などの畳を横山氏が手がけたというのもその証だ。

 「それでも仕事の多くは海外ですが」と朗らかに笑う横山氏。結局、計算でも戦略でもなく情熱を武器に突き進んできたその姿勢が、これまで閉ざされた世界だった畳職人の在り方に新たな道を示しているのかもしれない。自由な感性の一方で、国産の素材しか使用せずサステナブルな畳を心がけるなど、横山氏流の掟もある。用の美とは常にリバイスされる存在なのだと、作家の生き方が語っている。

YOKOYAMA TATAMI(ヨコヤマ・タタミ)

所在地 京都府京都市左京区大原野村町370
電話番号 075-366-6569
https://yokoyamatatami.com/jp/
●一般公開はしておらず、見学希望者はオフィシャルサイトより問い合わせのこと

CREA Traveller 2026年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。