母のこと大好きだけど大嫌い。

――妊娠した友人に対し、主人公の由良が「随分と面倒くさい人生を選ぶんだなあ」と吐露するところから物語が動き出します。すごい考えさせられる言葉ですよね。

 これはあくまでも由良の気持ちであって、もちろん私自身の本音ではありません。

 ただ、さっき「母との距離に悩んでいる」とお話したように、まだ母親との関係をきちんと精算できていなくて。大好きという気持ちと大嫌いな気持ちが共存して常に行き来しているんです。もし自分が娘を産んだら、今私が母に対して向けているのと同じ感情を向けられるかもしれないと思うと、どうしても気が重くなってしまう、というのはあります。

 それに、自分が母になることを考える時って、同時に、娘である自分にも改めて向き合わなくてはいけなくなりますよね。母と娘って鏡同士のような関係で、それでいて娘が向ける母親への眼差しはいつも手厳しい。その度に、世のお母さんたちはこんなにも日々頑張っているのに、子どもに様々な感情を向けられて、とても大変だなと感じますし、同時に、「私は母となった場合、子どものこうした手厳しさに耐えることができるのか……?」と自分の育て方を勝手に想像しては唸ってしまいます。

――自分が母親に向けていた感情が、ブーメランのように自分に戻ってきしまうと考えるとしんどいですよね。

 そうなんです! 私はとくに反抗期がひどかったので(笑)。耐えられる気がしません……。

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紗倉まな(さくら まな)

1993年、千葉県生まれ。国立高専在学中にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。2016年『最低。』(KADOKAWA)で作家デビューし、この作品は後に映画化され東京国際映画祭のコンペティション部門にもノミネートされた。文芸誌『群像』に掲載された『春、死なん』(講談社)と『うつせみ』(講談社)は共に野間文芸新人賞候補作となり注目された。近著に『犬と厄年』(講談社)がある。

あの子のかわり

紗倉まな/著
1,870円 河出書房新社
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