#063 Kuching
クチン(マレーシア)

ハリウッドも映画化したがった逸話とは?

1891年に建造されたヴィクトリア調のサラワク博物館。サラワクの自然や文化にまつわる資料や品々が展示されています。(C)マレーシア政府観光局

 ハリウッドが映画化に乗り出しつつも、諸事情から断念したドラマティックな逸話がボルネオ島のサラワク州クチンにあります。

 時は19世紀、シンガポール開港の父・トーマス・ラッフルズ卿に憧れていた英国の冒険家ジェームズ・ブルックは、当時、植民地下に置かれていなかったサラワクの存在を知り、興味を抱きます。そして折しもサラワクはゲリラたちが横行する騒乱の状態にあり、手を焼いていた族長たちは鎮圧してくれたら領地を譲ると、ブルックに依頼。みごと騒乱を鎮めたブルックは1841年から3代にわたる100年間、ホワイトラジャ(白人王)として、サラワク王国に君臨したのだそうです。

セメンゴ野生動物センターではオランウータンが森へ帰るためのリハビリを行っています。

 今でもクチンでは、サラワク博物館やイスタナ(王宮)、旧裁判所など、ホワイトラジャ時代の名残であるヴィクトリア調のコロニアルな建物が現役で利用されています。なかでもサラワク博物館は、“東南アジアで最も素晴らしい博物館”との呼び声もある人気の観光スポット。2代目白人王チャールズ・ブルックがサラワク各地で集めた熱帯雨林ならではの動植物の標本や先住民の文化を伝える品々が展示されています。

2015.06.20(土)
文・撮影=古関千恵子