東京もいよいよ桜の季節。

 東京地方では、千代田区の靖国神社の中に植えられた、ある桜の木に花が咲いた日に「開花」が宣言されます。桜の名所は東京にいくつもありますが、その靖国神社を含む「都心の桜」の満開の様子をお伝えします。コラムの最後には、桜散策と一緒に楽しみたい、美味しいテイクアウトごはん情報もちょっぴりご紹介!

 今年の桜シーズンも、よいお天気に恵まれますように。

静かに、そして賑やかに桜を愛でることができる名所

地下鉄九段下駅側から本殿へと続く参道の入り口に立つ大鳥居。秋は銀杏の黄金色、春は桜の薄桃色が彩ります。

 市ヶ谷と九段下の間、九段坂上に鎮座する靖国神社。政治家による参拝の話題で新聞やニュースで頻繁に取り上げられる神社ではありますが、桜の季節は驚くほどの賑わいを見せる花見の名所なのです。

 境内にはソメイヨシノやヤマザクラをはじめとした桜の木が約600本。そのうち能楽堂横にある1本のソメイヨシノは気象庁が東京の桜の開花宣言をする際の基準となる「標本木」とされています。桜前線が近づくにつれ、その木のまわりには「今日はまだか」「そろそろか」と人が集まり始めます。

 拝殿にかかる清廉な純白の御幕を背景に、命を宿したように力強く咲く桜の眺めは、思わず手を合わせてしまう荘厳さ。訪れる人々はさまざまな思いを胸に、静かに桜に見入っている様子です。

 しかし、拝殿を背に第二鳥居を抜け、第一鳥居(大鳥居)まで続く参道に入るとそこは、ガラッと様子が変わってお祭りムード。「千代田のさくらまつり」の開催時期に合わせて数多くの露店が出店するのです。生ビールをはじめとしたアルコール類、たこ焼きお好み焼きモツ煮焼鳥なんでもござれの大賑わい! 露店の前にはそれぞれにテーブルや椅子が用意され、頭上に咲き誇る桜の花を眺めつつ、同僚や友人たちと集まってワイワイ飲める雰囲気です。

 一陣の風が吹けば桜の花びらがビールの泡の上にヒラリ、なんて瞬間も。風流ですねえ。

2015.03.19(木)
撮影=中井菜央