フラが誕生した丘では毎年祝祭が開かれる

 また、こちらは諸説あるものの、女神カポがフラの始祖として、人々に踊りを教えたのも、ここモロカイ島だそう。フラ誕生の地では5月第3週末に“カ・フラ・ピコ”という祝祭が開かれ、踊りを神々に捧げます。

クムフラのレイモンドさんに、特別にフラの聖地へ連れていっていただきました。年に1度のフラの祭典“カ・フラ・ピコ”の日は誰でも入ることができます。

 フラの聖地を、“クムフラ”(フラの伝承者)のレイモンドさんとともに訪れる機会に恵まれました。その丘は、遥か遠くに海を望み、風が吹き抜ける見晴らしのいい草原。

 えんじ色の布をまとったレイモンドさんは儀式の準備を整えると、神々へ自己紹介と訪問の理由を告げ、ハワイと日本の文化が分かち合えるようにと、祈りを捧げながら、舞いはじめました。その舞いが力強くもあり、たおやかでもあり。手の動きに乗って、願いが空に昇っていくようで……。旅人を受け入れ、自分たちの誇りである文化を伝える交流のフラ。モロカイ島のニックネーム“友情の島”の意味が伝わってくるようでした。

カウナカカイの町が賑わう、サタデーマーケット。手作りの工芸品や農作物が並びます。

 モロカイ島の中心地は“カウナカカイ”。

 100メートル足らずのメインストリートに、西部劇にでも出てきそうな平屋の店が30軒ほど並んでいます。車で走り抜けたら、3分もかからないくらいの小さな中心地です。

車なら、あっという間に通り過ぎてしまう中心地のカウナカカイ。1939年頃からほとんど変わらない、ノスタルジックな趣が旅情を誘います。

 とある店主さんが1939年ごろのカウナカカイの写真を見せてくれました。古い写真と町並みを見比べてみて、「違いがわからないけれど?」と言うと、「並んでいる車が違うでしょ、木がずいぶん成長しているでしょ」と、笑いながら答えてくれました。けれど、何も変わらない町であることが、きっと彼らの誇りでもあるのでしょう。

2014.11.22(土)
文・撮影=古関千恵子