罠をしかけて野生の豚を獲り、畑を耕す自給自足生活
住民たち自らの手で切り拓いたという山道を4WDで走り、車が通れない狭い道の入り口まで来たら、そこから先は徒歩で集落をめざす。「道からそれないように気をつけて! 草むらの中には獲物を捕まえるための罠がしかけてあるから」とカリー。彼らの生活は基本的に自給自足。自生しているシイタケを採り、畑を耕し、山で野生の豚や鴨を獲り、食糧にしている。
「ロカスー!」。タイヤル語による歓迎の挨拶に迎えられ、集落に到着。さっそく、スタッフの案内で見学ツアーへと向かう。中は居住エリアと農耕エリアに分けられ、人が暮らす伝統家屋のほか、工房(織布と木工)や醸造所、ゲストをもてなす食堂などが点在している。ちなみに、「プーラオ・ブールオ」という集落名は、タイヤル語で「ぶらぶら歩く」という意味があるという。その名のとおり、ゲストはぶらりと散策しながら、タイヤル族の人々と触れ合うことができるのだ。
ここで暮らす人の中には、日本語を話す人もいて驚かされる。日本統治時代(1895~1945年)に日本語教育を受けた世代の原住民は、他民族との共通語が日本語という時もあった。お年寄りの中には今でも美しい日本語を話す人もいるし、その子世代でも、両親が使っていた日本語を覚えている人がいる。「ようこそ。今日はゆっくりと楽しんでいらっしゃい」と話しかけてくれる優しい日本語に、日本の田舎を訪れたかのような、ほのぼのとした気分になる。
2014.09.09(火)
文・撮影=芹澤和美
コーディネーション=Lily Yi