国外27か所、国内13か所。世界を歩きながら、自分自身と向き合い、誰かを“おもう”日々――。地球を舞台に旅した3年間を巡る40篇が収録された、アナウンサー・宇賀なつみさんの旅エッセイの第2弾『おもうがたび』(幻冬舎)から、一部抜粋してお届けする。

 今回の舞台は、「東京」。かつては海外生活も視野に入れていたという宇賀さんが、ついに東京で中古マンションを購入。自分好みの空間へとリノベーションしていくなかで気づいた、家づくりと旅の意外な共通点とは……?


後半戦の桜/2026年 3月 東京

 このたび、初めて家を買った。こんなに各地を転々としているのだから、家なんてこだわっても意味がないと思っていたし、かつては海外生活や地方暮らしにも憧れていた。でも、世界を旅する中で、「東京から来た」と言うと目を輝かせてくれる人達にたくさん出会い、少しずつ考えが変わっていった。先進国でも発展途上の国でも、同じように日本に好感を持ち、東京に憧れてくれている人が大勢いることを知って、生まれ育ったこの都市を誇りに思えるようになった。これから先も、世界をフラフラと彷徨う生き方をするだろう。それでも、やっぱり東京に軸を置いていたい。40歳を迎える今、ようやくそう思えるようになった。

 それならば、誰にも侵されることのない、自分だけの自分らしい空間が欲しい……。

 ある日思い立って不動産屋に連絡をして、内見を始めた。何軒目だっただろうか。なかなか希望条件と価格が合わずに苦戦していた時、何気なく勧められた中古マンションの一室に、心が動いた。暮れていく空をゆっくりと眺められる西向きの窓。この部屋となら、頑張れる気がした。

 初めて銀行からお金を借りて、大量の書類にサインをして……。それは間違いなく、人生で最も高額な買い物だったけれど、迷いはなかった。

 そこからリノベーションが始まった。建築家だった父に設計をお願いし、照明デザインの仕事をしている妹夫婦にも手伝ってもらい、焦らずじっくり、自分好みの空間を作り上げていった。

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