脂質制限の流行などで油を敵視する女性は多いけれど、種類を選んで適量を摂取すると、老化のスピードがゆるめられ、体と肌の健康を維持しやすくなることを、ぜひ知っておいて!
美と健康を守る! 油の摂り方を見直そう
体と同じように見た目も健康に年齢を重ねる「スキンロンジェビティ(肌の健康寿命)」という考え方が浸透しつつある今、注目を集めているのが、老化の原因となる酸化と糖化を防ぐ油の摂り方。油に関する多数の著書があり、油とナッツ研究の第一人者である、慶應義塾大学医学部・井上浩義教授にお話を伺った。
油の摂取はバランスが大事
「私たちの体は、新しい細胞が生まれ、古い細胞や老廃物が体外に排出される新陳代謝によって維持されています。新陳代謝が活発だと免疫機能が上がって病気になりにくく、肌の調子も整います。反対に、ストレスや生活習慣の乱れ、加齢などで新陳代謝が滞ると血流が悪くなり、疲労感、むくみ、肌荒れなどのトラブルを招いてしまいます」
鍵となるのは細胞だが、その材料になる“良質な油”が不足し、細胞の質を落としている人も少なくないという。
油の種類
オメガ3系(α-リノレン酸) えごま油・アマ二油など
オメガ9系(オレイン酸) オリーブオイル・菜種油など
オメガ6系(リノール酸) サラダ油・べに花油など
「細胞の中心部はたんぱく質、周りを包む細胞膜は油が主な材料です。極端なダイエットをしていない限り、量が不足することは稀ですが、質が担保されているかは別問題。たんぱく質は肉や魚など原型のある食材から選んで摂取できますが、油は加工食品などに見えない形で大量に含まれているので注意が必要です。油の摂取量は、成人女性で1日45グラム前後が目安ですが、朝食に菓子パン、間食にクッキー、夕食にコロッケ、風呂上がりにアイスクリーム、この食生活で45グラムはゆうに超えます。しかも、摂れているのはオメガ6系の油ばかり。これでは、全身の老化が進んでしまいます」
オメガ6系の摂りすぎは体内の慢性炎症を招き、血管や細胞が傷ついて老化が促進。花粉症などのアレルギーや高血圧、動脈硬化のリスクも高まる恐れがある。
「油には、脂肪酸による分類があり(左図参照)、健康と美容の寿命を延ばしたいなら、オメガ6系の摂取量を減らし、可能な範囲でオメガ3系と9系に置き換えるのが現実的なアプローチです」
摂取量は、オメガ6系対オメガ3系+オメガ9系が2対1の比率になるのが理想だ。
「オメガ6系は必須脂肪酸で食事から摂る必要がありますが、サラダ油やごま油などは家庭料理をはじめ、惣菜や加工食品にもよく使われているため、意識しないとあっという間に摂りすぎます。同じ必須脂肪酸のオメガ3系は、青魚に含まれるDHAやEPA、えごま油やアマニ油など、オメガ9系はオリーブオイルが代表的な油です。3系の油は加熱に向かないため、摂る機会が少なく、理想の比率2対1に対して、現代人は10対1くらいではないかとも言われています。少し割高ですが、料理に使う油をオメガ6系と9系の割合が半々くらいの米油や、9系をメインに6系・3系を含む菜種油に変えるのも一つの方法です」
さらに、オメガ6系の摂取量を減らす方法として井上教授がおすすめするのが、ドレッシングやマヨネーズを手作りすることだ。
「加熱には向かないけれど、クセのないオメガ3系のえごま油に酢やコショウを加えてドレッシングにしたり、卵黄を混ぜてマヨネーズにしたり。手間もさほどかからないので、月に一度、美と健康のためにドレッシング作りを試してみては」
優秀食材アーモンドが救世主
料理用の油以外では、オメガ6系を多く含む市販品のおやつを控え、オメガ9系のオレイン酸を50%以上含むアーモンドに変えるのがおすすめだ。
「実は、私が油の研究を始めたのは、アメリカのアーモンド農場を訪れたのがきっかけです。農場主の家族は日常的に紫外線を浴びているのに、深いシワがなく肌がきれいで、聞けば『アーモンドのおかげだ』と言う。帰国後に調べると、健康や美容と深く関わっていることがわかりました」
アーモンドは、老化の原因の酸化と糖化の両方を抑制できるスーパーフードだという。
「体内で生じた活性酸素が細胞膜などと結びついて酸化し、酸化が進むと細胞が傷つき、美容面ではシワ、たるみなどの原因になります。アーモンドに含まれる豊富なビタミンEとポリフェノールには、酸化を抑制する抗酸化機能が備わっています。
また、摂りすぎた糖質がたんぱく質などと結びつくと、老化を促進するAGEs(終末糖化産物)を生み出しますが、蓄積されたAGEsはなかなか排除できません。ところが、私たちが8名の男女に1日25粒のアーモンドを5カ月間摂取する試験を行った結果、AGEsが20%も減少しました。これは、本当にすごいことです」
アーモンドを食事と一緒に摂ると食材に含まれているAGEsとくっつき、体外に排出する効果が期待できるそう。
「女性の場合、1食に5~6粒を摂るといいでしょう。ただ、毎食食べるのは大変だという声も聞きます。アーモンドは細く砕くほど吸収率がアップするので、水分中に栄養素が溶け込んだアーモンドミルクを朝食に1杯、もしくは食後のカフェオレの牛乳をアーモンドミルクに置き換えるなど、生活スタイルに合わせて活用してみてください」
CREA 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
