他人の腕を自分の意思で動かすことに成功
今や手足が麻痺しても、脳の電気信号を読み取らせ、ロボットの腕を動かせる時代になった。けれど所詮は義手、やっぱり生身にはかなわないだろう、とあなたは笑うかもしれない。
ところが今度はアメリカの科学者が、2人の人間の脳を繋ぐことで、他人の腕を自分の意思で動かすことに成功した。
2025年9月22日。ニューヨーク郊外にあるファインスタイン医学研究所が発表した論文の中身はこうだ。首から下が麻痺した男性Aの脳に埋め込んだ電極に「コップを摑め」という信号を読み取らせ、向かいに座った健康な男性Bの腕の筋肉に無線で送り、代わりにコップを摑ませる。Bがコップを触ったその感触をセンサーが読み取り、Aの脳内の触覚を感じる部分に送ることで、Aはまるで自分がコップを摑んだように感じるのだ。
上司が優秀な部下に向かって言うセリフ、「僕の片腕になってくれ」が、いよいよリアルな意味を持つ時代になってきた。
開発企業側は言う。科学の力で他人の五感を共有し体験できるようになることはすばらしいでしょう、と。人類史上初めて、決してわからなかった「他者の痛み」を、皮膚感覚でわかるようになるのだ。
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堤 未果(つつみ みか)
国際ジャーナリスト。東京都生まれ。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券等を経て現職。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞、『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞と新書大賞をW受賞。『沈みゆく大国 アメリカ』『日本が売られる』『デジタル・ファシズム』など著書多数。2026年6月現在、WEB番組「新・堤未果のアンダーワールド」配信中。

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