外食が続いて栄養バランスが乱れてしまった、冷蔵庫の余り食材や消費期限が迫る調味料の使い方がわからない……体や台所をすっきりさせる“食の帳尻あわせ”のヒントを、フードライター・白央篤司さんが日々の食体験とともに綴ります。


「とにかく増える瓶詰」とのストレスフリーな付き合い方

「キッチンや冷蔵庫に常備している“とっておき”、ありますか?」

 こんな質問を定期的に受ける。そしてわりとこれ、困ってしまうのだ。というのも正直それほど……常備している特別なものがないから。

 ごく基本的な調味料と油類のほかは、オイスターソースとナンプラー、白だし、寿司酢ぐらい。食材なら雑穀、漬物2種程度。冷凍庫にきのこ、油揚げ、練りもの(さつまあげとか、ちくわとか)、ちりめんじゃこ、冷凍うどんと蕎麦、ぐらいのものである。

 「常備できたら便利だろうな」と思うものはたくさんある。ひとたらしでおいしさアップのハーブオイル、あるいはスパイスミックスソルト、XO醤的なもの。どこそこのおいしい缶詰、ジャムやペースト、ピューレに各種冷凍食品……といった物々をリサーチして試すのは大好きなのだ。しかしこの手の類はいただく機会も多く、また旅ごとにあれこれと買い込んでしまって、とかく増えやすい。

 棚にぎっしりと各地のユニークなものが並んでいるのを楽しく思えた時期もあったのだが、数年前から「自分が日常、本当に定期的に使うものは何か」を考えて、常備品をしぼっていった。

 「ミニマムな暮らしに憧れた」というのでもなく、極力「普段づかいしてるものだけ」にすると、出先で気になるものと出合えたとき、ためらうことなくどーんと買い込めるのがケアフリーで気持ちいい、と気づいたから。

 「買うならば、置けるスペースを作ってから」というのを意識するようになってから、なんとなく精神的な呼吸がしやすくなったように思う。前々回のこのコラムで「(気持ちにまかせて食べたいものを買いまくっていると)冷蔵庫は常に過剰在庫状態になって、余裕がなくなる。冷蔵庫の余裕というのは、使い手の気持ちにダイレクトリンクすることも多い」といったことを書いた。

 それはパントリースペースやキッチンの引き出し内も同じこと。余りにパンパンだと、「早く食べなきゃ」と気が重くなったり、「きっとアレとアレ、賞味期限過ぎてるな……」なんて後ろめたい思いにもなったり。買ったはいいものの、手つかずのものがギッシリ詰まっていると、使い手の息も詰まりやすい。

 ある時期の私は、「日常使っているものの予備を置くところ」に「食べてみたいもの」「気になって買ったもの」を置き過ぎて、何がなんだか分からなくなっていた。おいしそう、と思って買うのは楽しいけれど、ほどほどが肝心……と反省。

 まず2カ月に1度ぐらい、「使ってないものを一気に試す日」を設けるようにした。そして料理好きの友人に「開けてない瓶詰や缶詰、持ち寄って食べるイベントやらない?」なんて声掛けして、一気におおぜいで消費する会を開いたことも。

 楽しみながら消費しつつ、ストックのスペースを作る。わりと空間ができてきたら、また何かしら気になるものを買ってリサーチ。「買うならば、置く場所を作ってから」という当然のことができるようになったのは、ついこの2年ぐらいのことである。

次のページ “半常備”ぐらいのものを使い回すほうが快適に暮らせる