朝ドラで「何も起こらない物語」を書くのは難しかった
――今回、公開された『自然は君に何を語るのか』は、恋人・ジュニを家まで送り届けたことがきっかけで、彼女の家族と一日を過ごすことになってしまった詩人の青年・ドンファを主人公に、登場人物の微妙な空気感をユーモラスに描いた作品です。ふじきさんはこの映画をどのようにご覧になりましたか?
いまだにわからない部分もあるんです。ホン・サンス監督は、決して笑わせようとしているわけではないと思うんですけど、僕にはいつも笑っちゃう部分が多いんです。今回も、主人公のドンファが恋人のジュニの実家に行くと、ジュニは「お父さんは今日たぶんいないと思うよ」と言っていたのに、玄関先でお父さんと鉢合わせするってところからおかしかったですね。
さらにお父さんがドンファの車に乗って、勝手に出ていっちゃうのを観て、「そうくるんだ?」って(笑)。あれってけっこう異常な行動じゃないですか。
いつものホン・サンス監督の作品でも、端々に面白いことは起こるし、観る人それぞれがここはおかしいなって感じるところはあると思いますけど、あそこまで力業でわかりやすく、観客みんなを笑わせるシーンというのは少ないんじゃないでしょうか。少なくとも最近の作品ではあんまりなかったんじゃないかな。
――映画って、人によって観るポイントが違うと思うんですよ。例えば監督だったら「画」を観てるなと思うし、俳優だったら「演技」を観てるし、ライターの私だと観た後に書くことが多いのでどうしても「意味」を観てしまうところがあるんです。ふじきさんは、ホン・サンス監督の作品のどんなところを観ていますか?
西森さんは「意味」を観るんですね。僕にとってのホン・サンス作品の魅力は、やっぱり会話が豊かで面白いというところ。字幕ではあるんですけど、今回も延々とずっと観ていたいなという会話が続くのがよかったです。
個人的な感覚なのでなんとも言えないんですけど、今回、映画の中で登場人物が、ずっとしゃべってるじゃないですか。特にジュニのお父さんとお母さんが二人でいるときに、お父さんが酔っ払ってギターを弾いてるというシーンを予備知識なく見て、めちゃくちゃリアルだなと思ったんです。
そうしたら、後であの二人が本当の夫婦だったとわかって。ドンファがジュニとジュニの姉と一緒にご飯を食べているシーンで、お母さんが画面に登場してからの“家族感”がすごく高まったのを感じてたんですけど、「そういうことだったのか!」と納得しましたね。
