3月に最終回を迎えた後も熱狂がおさまらないNHK連続テレビ小説『ばけばけ』で、たびたび話題になったのが「朝ドラで、ここまで"何も起こらない物語"ができるとは!?」という驚きだった。
そんな『ばけばけ』の脚本を手がけたふじきみつ彦さんが、4月25日に、韓国の名匠ホン・サンス監督の映画『自然は君に何を語るのか』の上映イベントに登壇。
ライター西森路代さんを相手にホン・サンス映画の魅力を語る中で明らかになったのは、『ばけばけ』のあの“一見、意味のないシーン”に込められた、ふじきさんの意外な思いだった。
ホン・サンス好きの始まりは『ばけばけ』のあの俳優
――ふじきさんは、かねてからホン・サンス監督のファンであることを公言されています。どのような部分を好きになられたんでしょうか?
ホン・サンス監督がそう仰ってるわけではないと思うんですけど、監督の代名詞といわれる「何も起こらない物語」を僕自身も目指していまして。かなり影響を受けているところがあるんです。そんな話をあちこちでしていたら、今日のイベントに呼んでいただきました(笑)。
――ふじきさんが2024年にNHKのラジオ『ウチらと世界とエンタメと』に『ばけばけ』でヒロインの父親・松野司之介を演じた岡部たかしさんと出演されたときに、おふたりがホン・サンス監督をお好きだと知りました。ふじきさんが初めてホン・サンス監督の作品をご覧になったのはいつ、どの作品だったんでしょうか?
ホン・サンス監督は今年、デビュー30周年ということですが、僕が初めて観たのは15年くらい前。デビューされてかなり時間が経ってからです。新作の脚本執筆がはかどらない映画監督が、気分転換に後輩とその恋人を誘ってシーズンオフのビーチに行ったら、三角関係になってしまう……という『浜辺の女』(2006)という作品を、DVDをレンタルして観ました。まだサブスクがあんまりなかった時代で、ホン・サンス作品はレンタルショップにもそんなに置いてなかったんですよね。そんな中でも探して、借りられる作品は観ていきました。
――ホン・サンス監督を知ったきっかけは何だったんですか?
じつは、ホン・サンスを教えてくれたのも、岡部たかしなんです。岡部とはずっと一緒に演劇をやってきたんですが、彼が韓国映画が好きで、何か面白い映画ないかなって会話してたときに、「多分、ふじきくん、ホン・サンスのこと好きやで」って紹介してくれたんです。でも、岡部がどこからホン・サンスを知ったかって言うと、これも『ばけばけ』で借金取りの役をしていて、岡部と僕と三人で演劇をやっている岩谷健司さんで。だから、岩谷さんが岡部に薦めて、岡部が僕に薦めるという流れで始まって、それからずっとハマっている感じです。とはいえ、34作品、全部は観れていないんですけどね。
