調香の領域からアプローチしたオリジナルジンが誕生
――オリジナルジンの開発背景を教えてください。
和泉:僕らは調香のプロフェッショナル。そしてジン製造の一連のプロセスは、大まかにいえばこれまで僕らがやっていた香りの抽出を水で行うかアルコールで行うかの違いなんです。僕らの技術を活かし、オリジナルジンをつくることで、多くの人が集うこの場所にもふさわしいアイテムができると考え開発を決めました。
オリジナルジンの第一弾にはジンをジンたらしめるジュニパーベリーだけを使用することにしました。ジュニパーベリーはウッディな中にすっきりとした清涼感ある香りが特徴でジンには欠かせない存在です。
近年はクラフトジンブームで多くの商品が登場していますね。複数のハーブやスパイスを同一条件で釜に入れ蒸留したものがほとんどですが、香料の考え方においては一つひとつの植物には最適な抽出条件があり、複数種類を混ぜて蒸留することはあり得ません。単種で蒸留をしたものを混ぜていくのが調香なのです。
調香の考えに基づき、まずはベースとなるジュニパーベリーの最適な蒸留とは何かを模索することにしました。
実際に蒸留をしてみて分かったことは、長時間蒸留しても凛とした香りが続くということ。上質なお茶は何度淹れても香りがへたらず美味しく頂けるように、ジュニパーベリーにもどこか“スタミナ”のようなものがあり、他の素材と比べても長い蒸留時間に耐えうるポテンシャルを持った素材だと感じました。
トップはクリアでフルーティー。吟醸酒を連想する人もいるかもしれません。トップでは繊細で熱に弱い香りが現れる傾向にあります。ミドルは柑橘のテイストも併せ持つ香り。ラストは森の情景が浮かぶようなウッディな香りへと変化していくのです。
ピュアで純度の高い一種類の香りのみを使用しているので、「エッセンシャル・ジン」と名付けました。エッセンシャルオイルの蒸留においては、蒸留後に0.1~0.3%ほど分離して浮いてくる油分のみが香料となるのですが、見方を変えれば水溶性の成分は活用できていなかったということ。その反面、アルコールを用いたジンの蒸留においては分離することもなく素材そのものの香りをすべて溶け込ませることができる。水で蒸留する場合に拾いきれなかった成分も余すことなく、より植物そのものの香りとなるのです。
植物の芳醇な香りを時間を止めるように保つ。蒸留って本当に奥深いものなんです。溶解性だけでなく、アルコールは保存が効くので、これまでは出来なかった香りの領域にチャレンジすることが可能となりました。
――エッセンシャル・ジンのおすすめの飲み方やペアリングを教えてください。
和泉:BARでは、香りをプレーンに楽しんで頂くためにジンソーダで提供しています。実際にこのジンを使ったバーテンダーからは、「シングルボタニカルだから余白を生かして自由に創作ができる」といった声もありました。
蒸溜段階別だと、トップは爽やかでクリアな香りが特徴なので、シンプルに飲むのが最適です。白ワインのような使い方でも美味しく楽しめます。ミドルは最も抽出量が多く、使い勝手も良いです。シンプルに頂くも良し、カクテルのベースにするなど様々な遊び方をしてみて欲しい。ラストは、ウッディで複雑な香りがお食事とのペアリングにおすすめ。お魚の臭みを消しつつ、木調のものと調和するので、寿司下駄との相性の良さからお寿司屋さんからも高く評価を頂いています。
おすすめの飲み方をご紹介しましたが、僕としては「素材として自由な発想で使って欲しい」と言った想いが強いです。インスピレーションを掻き立てる素材作りを心掛けていきたいですね。
SCEN
住所:兵庫県淡路市志筑3371
営業時間:Store 毎週土曜-日曜 13:00-18:00、Bar 毎週金曜-土曜 17:00-23:00
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