日本のバレエ界が持つ「1ミリの差を埋める情熱」

――日本のバレエ界についてはどう感じていらっしゃいますか?

 私がいる東京バレエ団に関していえば、リハーサルなどを通して作品を突き詰めていく情熱があることに強みがあると思っています。皆、職業ダンサーとして淡々とこなすのではなく、「いい舞台を創りたい。いい舞台ができたら最高で幸せ。その瞬間が欲しい」という一心で日々頑張っています。

 アンサンブルは皆、いい舞台にするために、わずか1ミリの差を揃えようと一生懸命なんです。生活が完全に保障されているわけではない厳しい面もありますが、そこまで注げる生真面目さや団結力は日本人の強み。海外のカンパニーにはない、誇るべき良さだと思います。

「廃人になりそう」描いてきたキャリアと理想の幕引き

――若い頃に描いていたキャリアと今のご自身は重なっていますか?

 自分の将来について具体的に何かを思い描いてはいませんでした。私はいつも、とにかく“日々頑張ろう”みたいなことを積み重ねてきて今の自分があるので、今の自分の年齢でどうなっているのかは、全く考えていませんでした。

 ただ、若い頃のたくさんの夢は、ほぼすべて叶っています。だから夢の先に何があるのかを思い描いていたわけではないのですが、端的に自分がやりたいと思った事が実現できていて、いい形になっていると思います。私、願うと叶うんですよ。なぜかは分からないんですが(笑)。

――それほど人生を捧げてきたからこそ、「引退」について考えることはありますか?

 バレエだけやってきちゃったから、なくなったら何も残らなそうで怖いです。廃人になりそう(笑)。でも、いつか辞める時は必ず来ます。ダメになったものをいつまでもお客様に見せたくはないですから。その時は、シルヴィ・ギエムさんのように、最後を締めくくるにふさわしい『ボレロ』で引退できたらいいな、とぼんやり考えています。

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