日本バレエ界の至宝として、今なお輝きを放ち続けるバレリーナの上野水香さん。2023年からは東京バレエ団のゲストプリンシパルとして、48歳を迎えた現在も全幕作品の主役を踊り継ぐ驚異的な現役生活を送られています。

 名作『ボレロ』を踊ることを許された数少ない表現者でありながら、その素顔は驚くほど軽やか。「バレエがなくなったら廃人になりそう」と笑う等身大の本音から、年齢を重ねて見えてきた表現の深みまで、お話を伺いました。


踊り続ける原動力は「誰かの“何か”になれること」

――2023年からは東京バレエ団のゲストプリンシパルとして活躍されていますが、踊り続ける原動力はどこにあるのでしょうか?

 子どもの時から変わらないのですが、私がバレエを踊っていると、周りにいる人たちが幸せそうに笑っていたり、「もっと魅せて」と喜んでくれたりすることです。私が踊ることで、それが誰かの“何か”になれることが原動力となって、今まで踊り続けることができたのだと思います。

――現在も現役で舞台に立たれていることには、どんな感覚がありますか?

 舞台に立ち続けること自体は大変ですけれど、踊るレパートリーは20代の頃から『白鳥の湖』といった全幕物など変わっていなくて、変な言い方ですが、「ここでこのくらいで止まって、ここではこれぐらい回って」といった技術的なレベルもその頃と遜色ない状態でやれている気がします。

 30代の頃はそれが伸びないことに悩んだこともありました。でも、踊ることを重ねていくうちに、深みや芸術家としての年輪のようなものが養われていく。能力的な差がない状態でやれているなら、それはそれで素晴らしいことなのではないかと、今は素直に思えるようになりました。

 45歳を超えて全幕物を踊ると、かつて海外のガラ公演で一緒に踊っていたダンサーたちからも「まだやっているの? すごいね」と言ってもらえるようになりました。20代、30代の時に悩んでいたことが、今は逆に評価されていることに、不思議な感じがしますね。

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