絵に描いたような“クズ”男に対する感情

 4話では文菜が大学時代につきあった小説家の小林二胡(栁俊太郎)との日々が描かれる。彼は文菜が小説家になるきっかけをくれた人だったが、これが絵に描いたような「クズ」男だった。よく女性は3Bとつきあってはいけないと言われているが、このドラマを見ていると、小説家もそこに入るのではないかと思えてくるくらいだ。

 かつて彼が文菜に別れをつきつけたときの回想シーンがある。このとき、文菜が別れの理由を尋ねると、二胡は「今はひとりになりたい」「あなたの才能にも嫉妬してる」「俺には孤独が必要で」というと、文菜は溜息をひとつついて「それは甘えだよ」「あなた別に私と別れたからって書けないよ」「孤独になったら書けるとか、幸せだと書けないとかさ、そういうんじゃないでしょ」と諭すのだった。

 私はこのドラマには女性の怒りがないと書いたいたが、このとき、「怒り」はちゃんとあったと思った。怒りというより諦めに近いものがあるが。

「好きにならない人を好きになる」理由

 文菜は一話で「好きにならない人を好きになる」と言っていたが、その境地に至った過程が描かれていた。彼女の前にあらわれた男たちは、彼女を勝手に神聖視し、自分ではあなたを幸せにできないと勝手に去っていく。このドラマを見て、原稿を書いていたら、高畑勲監督の映画『かぐや姫の物語』を思い出した。かぐや姫もまた、勝手に崇められてそのことに困惑している人の話だからだ。

 しかし、このドラマはまだどこに向かうのかはわからない。現在の文菜は、この二胡の境地にも小説家としての共感を抱いている。文菜は様々な経験をして、かつての純粋な自分ではなくなっていて、そのことを自分でもなぜだろうと思っている。だから、このドラマはたぶんどこか特定の立場から誰かを責めるようなものにはならないだろう。

 見ていていたたまれないほどの生々しい空気感も含めて、これまで見たことのないものであるし、最後までどんなことになるのか無性に気になっている。