文菜に足りないものとは……?

 文菜は疲れているのではないか。

 当初、私は現代の恋愛もので、しかも自分に向き合ってくれない人と付き合っている話にしては、文菜に「怒り」が足りないと感じていた。昨今の女性が主人公の(ちゃんとした)ドラマや映画には基本、根底にフェミニズムがあり、自分を疲弊させたり傷つけたりする交際相手には、怒るのは当たり前になっていると感じていたからだ。しかし、文菜は最初のうちは怒らない。なぜなら、文菜のほうが、自由奔放で、ゆきおを怒らせるかもしれないような行動ばかりしているからだった。

 しかし、彼女が過去の恋愛によって疲れているのではないかということが徐々に分かってくる。

 5話で描かれるのは大学時代に告白された佃武(細田佳央太)とのことだ。彼は、大学の中庭で文菜が本を読んで泣いていたところに彼女の感受性を(勝手に)見て、彼女のことを好きになったのだった。しかし、文菜は実は目薬をさしてそれを拭っていただけだった。

 最初から、どこかぎくしゃくした空気が漂っていたふたりだったが、初めての恋に佃は舞い上がっていた。付き合うことになっても、別れる未来を予想し、不安になってしまいながら「うざくなったり、重くなったり、気持ち悪くなったら言ってね」「土田さんの日々が楽しければそれでいいんだ」と言うと、文菜は何度も何度も「わかった」「わかった」と繰り返す。

 しかし! それから二週間で佃は彼女に別れを告げる。文菜は別れたくないのにも関わらず……。文菜は佃の「土田さんの日々が楽しければそれでいいんだ」という言葉はなんだったのだろうと思い出す。

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