上野動物園にいたジャイアントパンダでオスのリーリー(力力)とメスのシンシン(真真)、この2頭の間に生まれたメスのシャンシャン(香香)、双子でオスのシャオシャオ(暁暁)とメスのレイレイ(蕾蕾)の全頭が中国へ旅立ちました。上野での飼育は時に課題に直面することもありました。解決に向けた取り組みを中心に振り返ります。


フィーダー(給餌器)を見て涙ぐむ人も

 2011年2月以来、約15年ぶりにジャイアントパンダがいなくなった上野動物園。西園のパンダがいたエリアには、ところどころ割けたり黒ずんだりした消防ホース製の箱や麻袋、竹筒などが3月1日(日)まで展示された。パンダが「愛用」していたフィーダー(給餌器)だ。フィーダーの中には、エサのニンジンやパンダ団子が入っていたこともあり、パンダはフィーダーを持つ、なでる、引っかく、嚙むといったように存分に扱っていた。展示されたフィーダーを見ていると、そうした光景がよみがえり、観覧エリアに立ち尽くす人や涙ぐむ人もいた。

 筆者が2025年12月26日(双子が屋外で過ごす最後の日)に取材をしていたら、シャオシャオは箱型のフィーダーを屋外から屋内の木の上まで運んだ。このフィーダーのすき間には、ニンジンが差し込まれていたこともあるが、このときは何もない。それでもシャオシャオは熱心にさわっていた。「理由は不明ですが、過去にいじっている最中にエサをとれたといった、何か良い刺激があったのかもしれません。単純におもちゃとして遊んでいるだけの可能性もあります」(上野動物園教育普及係)。

 フィーダーの活用は、環境エンリッチメント(動物の本来の行動を引き出せるように、環境に工夫を加えること)の一環だ。フィーダーは、パンダが工夫してエサを取り出す構造なので、パンダの探索行動を引き出す、採食行動の時間を延ばす、生活が単調にならないようにするといった効果がある。上野動物園では消防ホース製のハンモックも設置して、パンダの環境に変化や刺激を与えられるようにしていた。

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