京都で暮らす食いしん坊な方々に推薦していただいた、朝、ひる、晩のごはん処。

 言わずと知れた美食の都に数多ある料理店の中、通って太鼓判の老舗から話題のニューフェイスまで、間違いのない、とっておきの味をご紹介。

» [朝 その1] 河原町御池 「京料理 入舟」
» [朝 その2] 烏丸三条 「伊右衛門サロン 京都」
» [昼 その2] 下河原 「直心房 さいき」
» [夜 その1] 祇園 「祇園 川上」
» [夜 その2] 下河原 「祇園 にしかわ」

■LUNCH
懐石・宿 近又 【御幸町四条】

夏野菜の彩りが鮮やかな賀茂茄子ゼリーがけ(夏の懐石より)。

「京野菜をふんだんに使い、彩りも盛りつけも鮮やか。心のこもった京料理です」
……荒木桃子さん(「momoco×deco KYOTO」主宰)

 京の夏といえば、鱧。最高級の鱧を使った料理を、洗練されたもてなしと季節情緒あふれるしつらいの中でいただけるのが、200年以上前から続く料理旅館「近又」だ。

 「鱧にもいろいろあるけれど、600~700グラムの鱧が一番おいしい」と主人の鵜飼治二さん。料理人の腕が如実に表れる素材なだけに、初めて近又の鱧を口にした多くの人が、そのおいしさを改めて知ることになる。「最高級の鱧は生でこそ甘みがある」と、定番の落とし(湯引き)ではなく、皮をさっと焼いた焼き霜造りで出す。その他、椀物、鱧寿司、天麩羅、鍋、雑炊と、鱧のおいしさをまるごと堪能できる夏ならではのごちそうだ。

 近又の料理はどれも京懐石の真髄である出汁の旨みが際立ち、その洗練された味わいには自然と背筋が伸びる気がする。また、目にも涼しげな彩りや器との取り合わせの妙にはうっとりとため息が出るほど。悠久の時の流れを重ねた京町家で、美しい庭を眺めながら、心のこもった美しい料理をいただく。京都の風物詩を五感で味わうしみじみとした時間は、きっと忘れられない思い出になるはず。どっぷりと風情にはまりたい人は宿泊もおすすめ。

鱧の焼霜造りは皮にだけさっと火を通す。
窓や障子、天井など随所に意匠が凝らされた町家づくりの建物。国の登録有形文化財でもある。庭の眺めが美しい座敷は、テーブル席にも変更でき、足元を気にせず食事が楽しめる。

懐石・宿 近又 (きんまた)
所在地 京都市中京区御幸町通四条上ル407
電話番号 075-221-1039
URL http://www.kinmata.com/
営業時間 [朝食]7:30~9:00(ラストオーダー)、[昼食]12:00~13:30(ラストオーダー)、[夕食]17:30~19:30(ラストオーダー)
※宿泊客以外も利用可(要予約)
定休日 水曜日
予算 季節のおばんざい朝食5,000円(サ込)、昼夜共に夏の懐石(鱧あり)13,000円~、鱧懐石25,000円(要予約)
カード 可能
予約 可能

教えてくれたのは……荒木桃子さん(「momoco×deco KYOTO」主宰)
大人のビタ甘スイーツデコレーションのレッスンが人気。京都の老舗とのアクセサリーコラボ作品も発信。http://momocodeco.com/

2014.07.27(日)
文=金とよ
撮影=中島光行

CREA 2014年8月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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