自然を信頼すれば手間いらず? 米農家が話す自然栽培の在り方

 農作物を育てたことのない消費者側から見ると、自然栽培にはストイックなイメージがあるだろう。肥料も農薬も使わないなら、きっと虫害や草むしりは大変だろうし、安定して作物をつくりづらいのでは、という想像が浮かぶ。

でもそれは、そもそも農業をどう捉えるのかが要になる、と荒生さんは話す。

「たとえばもっと収量を増やしたいとか、こんな感じに葉っぱを生やしたいとか、人間の我が強くなると、自然物をその通りに動かすのは難しい。でも、自然を信頼して任せていれば、ストイックにならなくても自然と育ちます。僕は日本一暇な農家を目指していて、実際けっこう暇なんですよ。お米って7月上旬くらいになると、子育てでいったらだいたい20歳くらい。そこまでは少し手をかける必要があるけど、20歳になったらいちいち“ごはん食べたの? ”とか“忘れ物ない!? ”とか声かけないですよね。でも突き放すわけではなく、遠くから大丈夫かなって見ている。田んぼもそんな感じで見ています」(荒生さん)

 自然栽培は自然を信じるところからはじまると話すのは、宮尾農園の宮尾さん。いい苗を作ることと、田んぼのコンディションを整えること、その2点が生産にはとても大切なことだという。

「それは慣行栽培でも有機栽培でも同じこと。自然栽培は肥料を使わないぶん、農業の本質というか、ベーシックな部分を大事にすることが求められてくる。自然を見ながら、こうきたか、それならこうかなって工夫しながら育てていくものなのかなと。荒生さんは暇だなんて言いますけど、そのぶんやっぱりすごく工夫しているんですよ」(宮尾さん)

 11年前に自然栽培研究会を立ち上げた宮尾さん。現在 50名ほどの会員組織にまで成長している。

「誰が上で誰が下なんてことのない、 初心者もベテランもフラットな場所です。みんなが独自の捉え方や技術をオープンにして交流することで、それぞれが自分のやり方を進化させ、摑んでいく。安定した栽培方法の確立を目指しています。勉強会を入り口に始められる方もいて大切にしています」(宮尾さん)

 宮尾さんと同じく荒生さんも有機栽培から自然栽培に移行した農家のひとり。自家製の有機肥料での田んぼづくりに失敗したことがきっかけだったという。

「とにかくあのころは、健康な田んぼを取り戻すにはどうしたらいいのか、日々悩んでいました。でも考えてみたら、風邪ひく前に薬は飲まないし、肥料だって田んぼから自然と生まれてくるんだから、あえて撒かなくてもよかったんですよね」(荒生さん)

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