この記事の連載
堀井美香インタビュー前篇
堀井美香インタビュー後篇
「人生は“余生”じゃない。だから、堀井さんという存在が必要でした」(深作さん)

――お話を伺っていると、フェードラという役は、まさに堀井さんでなければならなかったのだと感じます。
深作 その通りです。ある年齢までいくと、残りの人生を余生のように捉えてしまう方も多いですが、決してそうではないと思います。そう思わせてしまっている社会が、ちょっと今、少し行き詰まっているだけで。
堀井さんはどんどん人生を楽しもうとしている。その姿とフェードラを重ね合わせようとしたという思惑は、はっきりありました。だから堀井さんなくしては、本作の企画は成り立ちませんでしたし、今、ご自身のものとして役を育てられている姿をみて、オファーして本当に良かったと思っています。
――そのオファーを受けた時はどのようなお気持ちでしたか?
堀井 お芝居はやったことがなく、演技のワークショップすら一度も行ったことがなかったので、最初は「いやいやいや……」という躊躇がありました。しかし、もう2回目ぐらいから、割と前のめりに「はい、やります」と気持ちが切り替わっていました。ぜひ、挑戦したいと思いました。
――なぜ新たな挑戦を?
堀井 朗読などの活動をしていることもあり、これは必ず自己研鑽になると感じました。この年齢からまた一歩踏み出し、新しいことを始めるチャンスをいただけることは、本当にありがたいことです。いただいたものを、100にも200にもして返していきたいと思っています。
――「同年代の女性を勇気づける」という点は意識されていますか?
堀井 それはまったく意識していません。私が相棒のジェーン・スー(Podcast番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』で共演中)とよく話しているのは、「旗を振るのは絶対にやめようね」ということでして。
「なんか、あいつらワイワイやっているな」というのを見ていただいて、「あ、なんだか楽しそうだから私も一歩踏み出してみよう」という、それぐらいの感覚がいいねと言い合っているんです。だから、あまりきれいにまとまらずに、楽しく、馬鹿らしく、雑多な感じで生きていきたいと思っています。
お芝居に挑戦したということに関しても、みなさんには「おいおい、堀井がまた何かやっているぞ」という感じで見ていただくのが一番良いと思っています。
2025.06.27(金)
文=綿貫大介
撮影=志水隆