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初めて主演で芝居の壁にぶち当たりました

聖は自身を多く語らず朝葉に静かに寄り添うキャラクター。朝葉はそんな優しさに触れて、少しずつ自分らしさを取り戻してゆき、一方の聖もまた、朝葉のそんな変化に自らも慰められ、過去の心の傷を少しずつ癒してゆく。
繊細に揺れ動いていく感情を丁寧に描いた映画だけに、「芝居の難しさと面白さを、身をもって体験させていただいた」と語る。
「IMP.としてデビューさせていただく前は、作品に出させていただけることがただただ嬉しくて、楽しいなと思ってお芝居していたんです。
でも今回、主演という責任ある立場を与えていただいて、壁に当たったんですよね。芝居した後に監督と一緒に映像をチェックしてみると、自分はこんなつもりでセリフを言ったのにそれが全然伝わっていなかったり、思っていたのと全然違う感じに映っていたり。
あれこれ考えすぎて、迷いの無限ループに入ってしまって、お芝居ってどうやってやるんだっけ?となった瞬間もあり。本気でもっと芝居が上手くなりたいなと思いました」
とくにW主演を務めた渡邉が演じた朝葉は、青年期失顔症を発症する難しい役どころ。渡邉と2人のシーンも多かっただけに、間近で渡邉の情感溢れる芝居に触れ、大きな刺激を受けたとも。

「朝葉が泣くシーンがあったのですが、本番直前まで渡邉さんとして会話していたのが、カメラが回った瞬間に朝葉になって涙を流していて圧倒されました。しかも、いろいろな角度から撮るからと、同じシーンを何度も演じたのですが、ちゃんと同じ熱量で、同じだけ涙を流すんです。
これがプロの世界で戦っている人のお芝居なんだなって圧倒されましたし、渡邉さんとは同い年ですが、自分の俳優としての力量がまだそこに追いついていないことを再認識して、いい意味でもっと上手くなりたいと芝居への熱量が上がった感じです」
IMP.としてデビューする以前から、ドラマ、映画、舞台に出演しているが、作品を重ねるほど、経験を積むほど、演じることと、自身のアーティスト活動とに親和性を感じている。
「アーティストを目指してこの世界に入ったこともあって、当初は自分がお芝居をやるとは思っていなかったんです。でも、チャンスをいただいて演技に挑戦する中で、表現という点に関してアーティスト活動もお芝居も共通しているんだと感じる瞬間がいっぱいありました。
たとえば曲の中で大人の色気を魅せるとか、爽やかな雰囲気を表現するとか、感情を伝える間の取り方とか。お芝居での経験やそこで培った能力がパフォーマンスに生きていると思うと、必要不可欠な現場なのかなと思っています。
多くの方が関わって僕に与えてくださっているチャンスだと思うので、ちゃんと責任をもって形にして、必ずグループに還元してやるぞ、という気持ちで臨んでいます」
佐藤 新(さとう・あらた)
2000年9月1日生まれ、東京都出身。7人組男性グループ「IMP.」のメンバー。2023年8月に『CRUISIN'』で世界同時配信デビュー。以降、俳優としてドラマや映画、舞台で活躍しており、今年3月公開の映画『春の香り』にも出演。本作が映画初主演となる。現在、IMP.主演の舞台『IMPACT』が名古屋・御園座、金沢・本多の森北電ホール、広島・広島文化学園HBGホールにて上演中。6月23日にはニューシングル『Cheek to Cheek』がリリース。
映画『青春ゲシュタルト崩壊』

優等生の朝葉は、周りの期待に応えようとするあまり、自分の気持ちを押し殺し、ある日突然、青年期失顔症を発症してしまう。周囲に知られることを恐れ、誰にも言えず1人で悩んでいた彼女の異変に気付いたのは、派手な見た目と集団行動をかき乱す行動で、教師から目をつけられている同級生の聖だった。聖に振り回されながらも、朝葉は自分が本当にやりたいことは何か、自分自身を見つめ直してゆく。一方聖も、朝葉と一緒にいるうち、自らの過去の心の傷と向き合ってゆく……。
原作:丸井とまと「青春ゲシュタルト崩壊」(スターツ出版刊)
脚本:三浦希紗
監督:鯨岡弘識
出演:佐藤新(IMP.)、渡邉美穂、田辺桃子、新井美羽、水橋研二、濱田龍臣、藤本洸大、戸田菜穂/瀬戸朝香
2025年6月13日全国ロードショー
https://seishun-gestalt.jp

2025.06.10(火)
文=望月リサ
写真=榎本麻美
ヘア&メイク=大森創太
スタイリスト=山本隆司(style3)