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「マジョマジョを使う年齢じゃないと分かっていても、実際に買えるのはそのライン」

――出勤メイクはBBクリームのみということですが、プライベートはいかがでしたか? 会社員時代、冬野さんにとってメイクがどういう意味を持つものだったのか、気になります。

 当時はまだ22歳くらいなので、飾りげのない生活を「若い時間を無駄にしている!」と思い(笑)、休みの日だけ、用事もないのに濃いめのメイクをしたりしていました。

 なぜかつけまつ毛だけを大量に集めたり、パーティメイクのようなカラフルなカラーアイライナーも買っていました。昔から『CUTiE』や『Zipper』のような原宿系ファッションがずっと好きだったんです。特にファンというわけではありませんでしたが、きゃりーぱみゅぱみゅみたいな雰囲気が好きだったので、そんな要素を取り入れたいという感覚でしたね。

――その頃ハマっていたメイクアイテムやメイク法はありますか?

 当時はお給料がそんなに良くなかったので、買えなかったんですよね。自分でももうマジョマジョを使う年齢じゃないと分かっていても、実際に買えるのはそのラインみたいな。だから、特別に「これが好き!」というブランドはありませんでした。たまにアナ スイとか欲しいと思ってましたけど、3,4千円くらいするのを目の当たりにすると、「どうしても欲しいものがあったときにしよう」と諦めていた感じで。

 一方で、スキンケアにはあまり興味がありませんでした。元々色白ですし、肌悩みも少ないほうで。何となくオーガニック系のものが好きでしたが、それも「メイク品に凝ってみたい」という気持ちの延長で買っていたので、特に何かに悩んでいたわけではなく……。振り返ってみればメイク自体も、美容雑誌の仕上がった顔の写真だけ見て、見よう見まね。とりあえずファンデとかを塗り終えたら、つけまだけはつけてみる。美容雑誌の「ここにこの色、こっちにこの色を塗って……」という指南を真似るのは面倒くさくて全然できませんでした。

 メイクが好きな人ってちゃんと調べたり練習するのでしょうけれど。

ずっと原宿系が好きで…「ようやく似合わない服を欲しがらなくなった」

――ちなみに今までメディアに出演されているお写真などを拝見していると、冬野先生はすごく洋服がお好きな印象を受けますが、それも『CUTiE』や『Zipper』の影響でしたか?

 子どもの頃からずっと目指してはいましたね。大学生になっても洋服にはそこまでお金をかけられないから、結局自分の目指すところに到達する日は来ないまま。就職したばかりの頃は当時ラフォーレ原宿の一階にあったセレクトショップに行って、値段を見て「ああ、まだ買えないなぁ……」ってずっと思っていました。年齢的にはその系統の服は卒業してるはずなのにって思いながら、似たような服をプチプラで買う、みたいな感じでした。

――大人になった今は、ファッションには満足できていますか?

 今やっと、本当に“やっと”っていう感じです(笑)。気持ち的にも派手派手を求めなくなって、今はやっと落ち着いたというか。長かったです。

 きっと普通の人は自分に似合う洋服やメイクに20代後半くらいで到達すると思うんです。元々キレイめなお洋服が好きな方はずっと逸脱せずに成長するというか。お洋服のグレードが変わっていくだけで、テイストが大きく変化することはないのかなって。

 でも、原宿系が好きなタイプはどこかのタイミングでエアポケットみたいなのに入っちゃう。軌道修正していく感じになりますし、ツラかったですから。ようやく“似合わない服を欲しがらなくなった”感じ。

――冬野さんが自己表現できるものが、洋服やメイクだけでなく「漫画」が加わったというのが大きいのかもしれませんね。

 それは本当にそうだと思います。20代の頃は、「ひと目で自分を分かってもらわなきゃ!」みたいな気持ちが先走って、かなりちぐはぐになっていましたから。

2025.06.17(火)
文=前田美保
撮影=榎本麻美、末永裕樹
マンガ=冬野梅子