この記事の連載
渡辺満里奈さんインタビュー #1
渡辺満里奈さんインタビュー #2
――Chapter2「家族と不機嫌」では、まさにそんな思春期のお子さまとの向き合い方も書かれています。
渡辺 「〜しなさい」って、子どものことを考えて言っているようで、実は子どものためにならないということに気がついたんです。娘ともそれでぶつかったことが多かったのですが、子どもを自分の思い通りにするのはやめようと思ったら、親子関係がよくなりました。
エッセイでも紹介していますが、医師で臨床心理士である田中茂樹先生の『去られるためにそこにいる 子育てに悩む親との心理臨床』(日本評論社)というご著書に出会って、私は本当に救われました。いまでも何度も読み返す、私の心のバイブルです。エッセイで詳しくご紹介しているので、子育てにお悩みのかたはぜひエッセイを読んでいただきたいです。

「なんで毎日私ばっかり」とちゃんと言えばいい
――Chapter3「家事と不機嫌」で、継続することが苦しいとおっしゃっているのも、深く共感しました。
渡辺 結婚した時は本当に、私が料理をするのが当たり前だという思いすら抱かないほど、当たり前にやっていました。
でも毎日仕事をしながら献立を考え、食べる量を考え、料理を作り続けるって大変なんですよね。疲れてくると「なんで毎日私ばかりやらなくちゃいけないのか」という不機嫌の種が芽を出し、ムクムクと大きく枝を伸ばし始めます。
でもこれも、「なんで毎日私ばっかり」とちゃんと言えばいいこと。先ほどのお皿洗いもそうですが、「私がやらなきゃ」と自分を縛らずに、夫や子どもたちにもできることはしてもらえばいいし、「品数が少ないかな……」なんて思わなくてもいいと思います。
結局、私の不機嫌は「こうでなくちゃいけない」と自分を縛っていることにもあるのではないかと思います。呪縛を解くのはなかなか難しそうですが、自分にしかできないことなので、不機嫌や呪縛と向き合いながら、少しずつ手を離していけたらと思っています。

不機嫌ばかりな私たち
定価 1,870円(税込)
講談社
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2025.05.30(金)
ヘアメイク、スタイリング=三上津香沙
文=相澤洋美
写真=今井知佑