この記事の連載
渡辺満里奈さんインタビュー #1
渡辺満里奈さんインタビュー #2
――「不機嫌は身近なところから始まっている」(エピローグ)というお言葉も印象的でした。
渡辺 私の場合は、誰かのせいで不機嫌になるというよりも、自分の心の中にあるモヤモヤがいろんな形をとって不機嫌になっていたように思います。だから、「不機嫌だよ」と声をあげて解消する努力を見せることで、私自身も家族も気持ちが楽になったように感じます。
結局、不機嫌に出会ったときに我慢したり見ないふりをしたりしていたのが、よくなかったのではないかと思います。
――渡辺さんの「不機嫌宣言」に対し、ご家族はどのような反応でしたか?
渡辺 ちょうどコロナ禍だったので、家族みんなが家にいることが多かったんです。だからまずは「自分が食べた食器は自分で洗う」というルールを決めるところから始めました。
それまでは、食事の支度も片付けも、掃除も洗濯も、「ママだから」という理由でほとんど無条件に私が請け負っていました。そこから、「お料理はママが作るから、みんなは自分が食べたものを自分で洗うことにしよう」と決めたところ、夫も子どもたちも、意外とちゃんとやってくれました。
ただ、コロナ禍が明けて日常が戻ってくると、だんだんルールが守られなくなってくるんです……。洗っていない食器がシンクに置いてあると「やっぱり私か!」と(笑)。

――せっかくルールを決めたのに……。
渡辺 まあでも、子どもたちも勉強や部活で毎日忙しいので、それを考えると仕方がないかな、と思うんです。でも、「私がやることを当たり前だとは思わないでね」と、ちゃんとクギを刺しています。「あなたたちが大人になったときは、性別に関係なく家事をするのがもっと当たり前の時代になる。だから、大人になって困らないよう、できる時は自分のことは自分でするという意識はいつも持っていてね」と、子どもたちにはことあるごとに伝えているので、いまはそれでいいかな、と思っています。
子どもには1人でも生活していける力をつけてあげたい
――家事の分担は、お子さんの将来を考えてのことでもあるのですね。
渡辺 私は子どもが生まれた時から、1人でも生活していける力をつけてあげなきゃいけないと思って育ててきました。
たとえば、子どもたちが小さいときから、下着や靴下を汚したら、そのまま洗濯機に入れるのではなく、自分で1回洗ってから洗濯機に入れるように話していました。
また、細かいことですが、トイレットペーパーやシャンプーなどは最後に使い切った人が責任を持って補充するということも徹底してきました。もちろん買い置きは私がしておくのですが、ストックを持ってきて交換することは、使い切った人の“仕事”としてきました。料理や洗濯まで子どもにさせるのは無理ですが、年齢に応じて自分の身の回りのことは自分でする、という意識がついたのではないかと思っています。
ただそれも、子どもたちが大きくなってくると、つい「片付けなさい」「宿題しなさい」「提出物出しなさい」って「〜しなさい」ばかりに……。これも私の不機嫌の一因になっていると気づいて、少しずつ手放すようにしたら楽になりました。
2025.05.30(金)
ヘアメイク、スタイリング=三上津香沙
文=相澤洋美
写真=今井知佑