10年が経ち、俳優としての挑戦と成長

 デビュー10年を迎えた、俳優の濱正悟さん。

 スーパー戦隊シリーズ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のルパンブルーや、連続テレビ小説『舞いあがれ!』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などの出演で注目を集めている、旬の俳優だ。

 そんな濱さんの最新出演作は、Hulu オリジナル『おとなになっても』。おとなの女性同士の恋愛を描いた志村貴子さん原作の本ドラマにて、濱さんは山本美月さん演じる綾乃の夫・渉を演じた。

 “おとなになっても”解決できない悩みに葛藤し逡巡する登場人物たちの心情を追うビターなヒューマンドラマで、濱さんはどのように役に向き合ったのだろうか。

 濱さんならではのコミュニケーション術エピソードや、最近ご自身に起こったちょっとした心境の変化まで、教えてもらった。


難役への挑戦

――ドラマ「おとなになっても」では、濱さんが演じる渉の妻・綾乃が女性と恋に落ちます。難しい役どころかと思いますが、オファーがきてどのような思いでしたか?

 最初に原作を読んで、台本も読んで、「大久保渉という役を生きるのは難易度が高そうだな、どうしよう」と率直に思いました。渉は綾乃との結婚生活5年があっての第1話スタートだったけれど、そもそも自分は結婚もしていないのでどんな感じだろう、と。いろいろなことを想像したり準備したりしつつ、現場でどうなるかなと思いインしました。

――渉と濱さんの共通点は、どこかあったんでしょうか?

 思考型なところは似ているかなと思います。渉も自分も感情超優先型ではないんですよね。渉はどこかでストッパーがかかるタイプの人間なのかなと、台本を読んで思っていたんです。だから、本当はキレてもいいときに、理不尽な状況でも一旦飲み込んでいるのかなと理解していました。

――そこは「わかる、わかる」という感じなんですね。

 わかります。わかるけど、その次(に取る行動)は自分とは違うかも? だからこそ、自分の人生の延長線上にいるかもしれない、自分がなり得るかもしれない人間だなと思いました。

 渉という役もそうですし、これまで演じてきた役も含め、「こういうことをしていたら、こういうことになるんだよ」と(作品を通して)知るわけじゃないですか。「じゃあ俺は違う方向に行ってみよう」という風に毎回学ぶ感じがあるんです。ドラマや映画を観て「勉強になるなあ」と思うことと似ているのかもしれません。役を演じて知ることがいっぱいあるんですよね。

――役を通してご自身も追体験するという。濱さんは、人間に対する興味は強いほうですか?

 結構、興味はある気がします! ……一見、興味なさそうに見られるんですけどね(笑)。

――となると、共演した妻の綾乃役・山本美月さんとも結構コミュニケーションを取ったりお話したりしましたか?

 いろいろお話させていただきました。「二人はこのとき、どういう感じだったんだろう?」と作品やシーンについて話しました。プライベートにずかずかと踏み込むことはしていないつもりですが、夫婦役というのもあり結婚生活におけるリアルな会話の感じや空気感みたいなものも聞きました。

 あとは、山本さんが出ている作品を見ていたので、その作品について「面白かったです!」とか「どんな感じだったんですか?」とかも話しました。

――山本さんの作品だと具体的に何がお好きだと、ご本人にお伝えしたんですか?

 出演されていた『刑事ゆがみ』がすごく好きなんです! 放送されたときに見ていましたし、撮影のタイミング付近で見る機会があって、また見たくらい。山本さんにそのことをお伝えしたら、いろいろなエピソードをお話しいただいて盛り上がりました(笑)。すごくうれしかったですね。

――山本さんとの関係性から伺えますが、結構和気あいあいとした現場だったんですね。

 はい、本当に皆さんがあたたかくて。気を使わずに話し合えるような空気感を出していただいたので、すごくお芝居もしやすかったです。

2025.04.26(土)
文=赤山恭子
撮影=深野未季
ヘアメイク=茂木梨沙
スタイリスト=徳永貴士(SOT)