「ハリウッドは無意識のうちに女性を排除してきた。だけど……」
ダンスを学んだことがなかったガスコンは、「もしゾーイのようにテーブルの上で踊らされていたら、死んでいたかもね」と笑いつつ、共演のサルダナ、ゴメスに尊敬の念を示す。これらの女優たちみんなが最も誇るのは、それぞれにバックグラウンドの違う複雑な女性が登場するすばらしい映画が作られたことだ。

「長いこと私は映画の現場で紅一点だった。ハリウッドは無意識のうちに女性を排除してきたの。だけど、女性が力を合わせると、すごいことができる。女だらけの家に育った私は元々知っていたけれど、この現場でまた確信したわ。女性のための、女性についての映画は、もっともっと作られるべきよ」(サルダナ)
ジャック・オーディアール 1952年、仏パリ生まれ。81年から脚本家としての活動を開始し、94年に『天使が隣で眠る夜』で映画監督デビュー。同作でセザール賞を3部門受賞し、続く『つつましき詐欺師』(96年)でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。近年では『預言者』(09年)、『ディーパンの闘い』(15年)、『ゴールデン・リバー』(18年)などがある。
ゾーイ・サルダナ 1978年、米ニュージャージー生まれ。2000年に『センターステージ』で映画デビュー。09年にはジェームズ・キャメロン監督作『アバター』でヒロインのネイティリを演じ一躍有名に。マーベル作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでは、ガモーラ役を務める。
INTRODUCTION
フランスを代表する名匠、ジャック・オーディアールが、過去を捨てて、女性として生きることを決意したメキシコの麻薬王とその周囲の葛藤を描く。サスペンス、アクション、ミュージカル、ヒューマンドラマなどジャンルの枠を超越した作品となった。本年度ゴールデングローブ賞最多4部門受賞を果たし、本年度アカデミー賞では最多12部門13ノミネートを達成し、助演女優賞と歌曲賞の二冠に輝いた。新鮮で大胆な脚本に説得力を与えたのは、トランスジェンダー俳優のカルラ・ソフィア・ガスコン。女性に生まれ変わろうとする麻薬王の心の機微を繊細かつ情熱的に表現している。
STORY
優秀な弁護士・リタは、その高い能力をボスに良いように利用され、心をすり減らしていた。そんな時、メキシコ全土を恐怖に陥れていた麻薬カルテルのリーダー、マニタスより「女性としての新たな人生を用意してほしい」という驚くべき依頼が舞い込む。計画は成功し、マニタスは新たな人生をスタートさせた。その4年後、マニタスはエミリア・ペレスとしてリタの前に現れる。そこでエミリアが、元妻と二人の子供との再会を望んできたことで、再び運命の糸が交差していく。
STAFF & CAST
監督:ジャック・オーディアール/出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス/2024年/フランス・ベルギー/133分/配給:ギャガ/© 2024 PAGE 114 - WHY NOT PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA/COPYRIGHT PHOTO : © Shanna Besson

2025.04.08(火)
文=猿渡由紀