「今作は、自分の中で大切に取っておきたい物語」

――完成したドラマを見た感想を聞かせてください。
橋本 ドラマでは、「中身がない」「空っぽ」がメタファーとして登場します。でも正解を導きだそうとすればするほど、矮小化してしまう気がして。共演した岡田将生さんを始め、皆さん今作に対して「言葉にできない」「正解がわからない」とお話されていたんですけど、本当にその通りです。私はわからないまま大切に取っておきたい物語だなと思います。
それにしても、これだけ脚本や原作という文字に触れているのに「言語化できない気持ちを抱く」とは本当に不思議です。「文字じゃないものを書く」という文学の奥深さを感じて震えました。
あと俳優としてうれしかったのは、「つながったんだ」と感じた場面ですね。冒頭の私がクローズアップされる場面で、無意識に少し震えているんですけど、終盤のあるシーンで、岡田さんが少し揺れていたんです。
たまたまか狙ったのかわかりませんが、個人的には嬉しかった瞬間です。

――視聴者にぜひ注目してほしいですね。
橋本 そうですね。純粋な原作ファンとしては、「小説で思い描いた世界が、そのまま映像になった」という感動もあります。地震は私たちにとって現実の出来事ですが、作品は異世界のような世界観が面白くて続きが気になります。
――1話以降も3つのドラマが映像化されます。楽しみにしているものはありますか。
橋本 個人的には、原作で印象的だったシーンがどうなっているのか気になりますね。
『アイロンのある風景』の焚き火シーンで、登場人物の2人が「火が消えて真っ暗になったら、一緒に死のう」と言い出すんです。でも焚き火が消える前に、眠ってしまいそうになる。「焚き火が消えたら起こしてくれる?」と尋ねると、「心配するな。焚き火が消えたら、寒くなっていやでも目は覚める」と返す。そのセリフが大好きで。
――死を見つめているのに、「生」を強烈に感じさせる表現ですよね。
橋本 そうなんです。「目が覚めたらきっと2人は家へ帰るんだろうな」と思わせる描写でした。
ドラマでは原作で描かれていない2025年の世界を表現しているので、どんなお話になっているのかとても楽しみです。
2025.04.03(木)
文=ゆきどっぐ
撮影=松本輝一