風神と雷神が守っているのに、なぜ「雷門」なのか? 言われてみればもっともな疑問である。本書では、そんな謎の数々が解き明かされる。

 浅草は、今もなお、江戸の面影と下町の情緒を残す街として変わらぬにぎわいを見せる。

 また、隅田川対岸に東京スカイツリーがオープンした2012年以降は、それまでとは異なるタイプの観光客がこの地を訪れ、新たな視点から浅草を楽しむようになった。

 そんな浅草という街が秘めた魅力を深く掘り下げる本が、このたび刊行された。その名は『浅草謎解き散歩』。

 本書には、一度でも浅草に行ったことのある読者ならば興味を引かれるだろう問いばかりが並んでいる。

 例えば、浅草寺編では「風神と雷神がいるのに『雷門』?」「浅草寺のおみくじは凶が多い?」、歴史編では「かっぱ橋商店街のいわれは、やはり河童?」「花やしきは文字通り花のテーマパークだった?」、文化編では「オペラと浅草オペラって、違うの?」「ビートたけしが修行したストリップ小屋って、どこ?」、そして、浅草名物と食文化編では「浅草で芸能人御用達の店ってある?」「浅草にすき焼の名店が多いのはなぜ?」などなど。

 編著を手がけたのは、浅草を知り尽くした3人。

 川上千尋氏は、老舗の「染絵てぬぐい ふじ屋」店主。手ぬぐい作家であると同時に江戸文化にも造詣が深いことで知られる。荒井修氏は、扇の名店「文扇堂」の4代目。歌舞伎界や舞踊界、落語界に大勢のご贔屓を持つ。そして、塩入亮乗氏は、浅草寺内法善院住職にして大正大学非常勤講師。執筆や講演などにおける分かりやすい語り口は、幅広い層から好評を得ている。

 昔の顔と今の顔、その双方が見事に融合した浅草の街のことが、もっと好きになる一冊だ。

『浅草謎解き散歩』
川上千尋、荒井修、塩入亮乗 編著
発行 KADOKAWA/中経出版(新人物文庫)
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2014.05.19(月)