
この時計の魅力は、一目で心を奪われる美しい緑色のダイヤル。スイスの秘境、ヴェルツァスカ渓谷の澄み切った水面からインスピレーションを得た特別な色彩は、見る角度によって表情を変える。一瞬、スイスアルプスの清流に身を投じたような清々しさを感じるはずだ。

だが、この時計の本当の魅力は、その佇まいだけではない。時計の側面にある小さなボタンを押すと、不思議なことが起きる。重なっていた二本の針が分かれ、もう一つの時間が現れるのだ。これは、遠く離れた場所の時間を示すGMT機能。

「トンダ PF GMT ラトラパンテが語るのは、感情と直感の言語です」とブランドのCEO、グイド・テレーニ氏は語る。「動作ひとつで、タイムゾーンや人々の間にある距離を消し去ります。それは単なる複雑機構ではなく、より人間的で、優雅に時間を体験する方法です」

この時計を身に着けると、ボタンを押す一つの動作が特別な意味を持つようになる。朝起きて、海外にいる家族の時間を確認する。出張先で、ビジネスコールの時間を把握する。この機能により、時刻を知るという単純な行為が、世界との繋がりを確認する瞬間へと変わる。
そして用が済めば、もう一度ボタンを押すだけで、二本の針は再び重なり合い、シンプルな姿に戻る。この「必要なときだけ現れ、不要なときには姿を消す」という哲学こそ、同ブランドが考える現代のラグジュアリーの本質だという。

時計の内部には215個の部品からなる精密な機構が息づいている。しかし、そのすべては装着者の感情に寄り添うためにある。地球の裏側にいる恋人が朝を迎える瞬間を想像しながらボタンを押す。離れていても心は近い——そんな感覚を指先で確かめられる時計。
「世界がかつてないほど互いに繋がっているこの時代に、不要なときには見えなくなる複雑機構をつくることで、必要な人だけがその姿を見ることのできる純粋さと奥ゆかしさというラグジュアリーを提供したかったのです」とテレーニ氏は続ける。「本質に寄与する隠れた洗練――私たちは、真のラグジュアリーをこのように定義します」

40㎜のスタイリッシュなケースは手首にさりげなく馴染み、男女問わず身に着けることができる。緑色の美しいダイヤルには、熟練の職人が手作業で細かい模様を刻んでいる。それは身に着ける人の個性を表現するものであり、押し付けがましさとは無縁の存在感を放つ。

時計は時を刻む道具にとどまらない。それは物語を紡ぎ、感情を運ぶメッセンジャーになる。「トンダ PF GMT ラトラパンテ ヴェルツァスカ」は、あなたと大切な人を結ぶ静かな絆になるだろう——たとえ、地球の反対側にいたとしても。
パルミジャーニ・フルリエ
https://www.parmigiani.com/ja/

Column
CREA'S CHOICE
新製品やイベント情報など、選りすぐりの気になるニュースをお届けします。
2025.04.01(火)
文=倉持佑次