今年も残すところわずか。12月は美容室にとってかきいれ時、最も忙しくなる時期です。

 やっと取れた予約でお店へ出向き、ヘアスタイルを相談。ところが、美容師さんが困り顔になってしまったことはありませんか?

 実は、お客様にとっては普通のオーダーが、美容師にとっては無茶ぶりになってしまうことはよくあります。そして、限られた時間で、希望通りの施術が難しい理由をうまく説明できないことも往々にしてあります。

 断られた理由が理解できないと、「時間をかけたくなくて、断ってきたのでは?」と不信感を抱いてしまうこともあるかもしれません。

 今回は、そんな希望に沿うことが難しい施術“あるある”を4つご紹介して、困り顔の美容師さんたちの事情を代弁させていただきます。


1. 白髪染めは「もうちょっと明るくしたい」が難しい!?

 髪色や明るさは、シーズンや気分で変えたくなるもの。伸びてきた根元の白髪も気になってきたし、「次は、全体をもうちょっと明るめの茶髪にしたいな」と思い、美容師さんに相談。ところが「できない」と言われてしまった、そんな方は少なくないのではないでしょうか。

 このやりとりは一見、お客さんからの信頼すら崩れてしまいそうな事例です。ですが、実は美容師にとって「白髪染めで染めた髪」を「少し明るくする」という微調整は、非常に難しいのです。

 これは、白髪染めの構造が原因です。定期的に白髪染めをしている方はご存じだと思いますが、黒く染めた髪は時間と共に白髪に戻ることがほとんどありません。なぜなら白髪染めの薬剤は、染まった「黒い色素」が抜けないように作られているからです。

 お客様からすると、お洒落染め(茶髪に染めるカラー)で染めた髪の感覚で「もうちょっと明るい茶髪」にしたい、という意向だと思います。ですが、白髪染めの抜けない黒い色素が「もうちょっと明るく」できない原因になっているのです。

 白髪染めで染まった髪は、「お洒落染め」の薬剤を重ねることでは明るく染まりません。白髪染めの黒い色素を抜くためには、脱色に特化した「ブリーチ」や「脱染剤」と呼ばれる薬剤が必要になります。しかし、ブリーチは施術に時間もかかるし、髪への負担が大きく、その上明るさの調整も難しい。

 結果として、美容師にとっては「もうちょっと明るい茶髪」といった希望が、難しいオーダーになってしまうのです。とはいえ、美容師は他の解決案を持っていることもありますから、ご気軽に相談してみてください。

2024.12.21(土)
文=操作イトウ