バンクーバーの人たちはとにかく優しい
――それぞれ常識が違う人たちが、交わっていくのに必要なことってなんでしょうか。
光浦 それは……私もトレーニング中って感じですね。未だに「え……」って思うことは山ほどある。でもね、バンクーバーの人たちってほんとおおらかな人が多いんですよ。例えば移民をこれだけ受け入れて、外国人が土地を買って地価が高騰して、カナダ人の若い人がカナダに家を買えないっていう状況なんです。今は深刻な職不足もある。そうなると怒りが移民に向く条件はもう揃っちゃってるわけだけど、 私の周りにいるバンクーバーの人たちは移民を否定しないんですよね。それどころか英語がしゃべれない私みたいな人間に対して、わかりやすい英語で伝えてくれたり、とにかく優しいんですよ、私そこにはすごく影響を受けました。
――うらやましい。
光浦 カナダ人と「地価が高騰して、もう本当住めないよ」「家賃も物価もぐいぐい上がるし、大変だよ」っておしゃべりしながら、ああでも、その理由の1つに私のような留学生も含まれてるんだよなって。そう言うと「それはそれで別の問題だよ。政府が受け入れたわけだしね。移民のおかげで経済も良くなったのは確かだし」って。素晴らしい教育を受けてるなぁって思いました。
――なんか……めちゃくちゃ大人というか、成熟してますね。光浦さんが大変なことがありながらも、日本に帰りたいとは一度も考えなかったとおっしゃる一端が今のお話で少しわかった気がします。
光浦 もしそこで「出ていけ!」とか、ヘイトみたいな一言でも言われてたら、私は即日本に帰ってると思う。本当に素晴らしい人に恵まれたっていうのもあるのかもしれない。ただこの本ではまだ、ホームステイしている語学学校の生徒という守られた時期のことで、まだ社会に出てないですからね。今の方がもっと行動範囲も広がって大変ですし、面白いですし、そのことも書いていきたいです。
2024.10.12(土)
文=西澤千央
撮影=深野未季